副業が社員の人事評価に与える影響について、企業の人事部門の本音が明らかになった。防衛関連企業など機密性の高い事業を手がける企業では厳しいチェックが行われる一方、教育・採用系の担当者からは成長を重視する前向きな意見も多く聞かれた。また、ある外食企業の接客がダントツの人気を集めているという。
企業の本音:リスク管理と成長の狭間
副業を巡っては、事前申請を義務付ける企業と、事後届け出を求める企業で対応が分かれる。電機メーカーは「防衛関係など機密性の高い事業をしていることから、情報漏えいなどリスク管理の観点から、厳しくチェックしています。グレーな場合、許可しないということもあります」と語る。
物流企業は「事前申請は不要で、事後に届け出をしてもらっています。ただ、競業避止義務に違反したり、当社の信用を傷つけたりすることが懸念されるので、『もっと厳しく審査するべきではないか』という声が人事部門内にあります」と明かす。
一方、IT企業は「社員を信用しており、ルールを定めていません。社員から自主的に報告が上がってくることはありますが、たいてい報告せず勝手にやっているようです。このやり方で今のところ大きな問題はありません」と寛容な姿勢を見せる。
人事・労務系と教育・採用系で見解が分かれる
人事部門の担当者の見解は、担当する業務によって明確に異なる。人事・労務系からは否定的な意見が多く寄せられた。
サービス業の担当者は「社員が副業をすると、会社勤務との通算の労働時間を管理するのが難しくなります。長時間労働で疲弊し、本業でのパフォーマンス低下や健康状態の悪化につながります。労務管理を担当する立場としては、絶対にやらないでほしいというのが本音です」と訴える。
エネルギー業界の担当者も「会社が成長・自己実現の機会を提供できるとは限らないので、副業を否定はしません。ただ、社員には会社で充実した仕事をし、成長してほしいと願っています。さまざまなリスク要因も踏まえると、しないほうが望ましいのではないでしょうか」と慎重な姿勢を示す。
副業のメリットを重視する声も
一方、教育・採用系からは副業のメリットを重視する意見が目立つ。素材業界の担当者は「無条件にどんどんやるべきとは思いませんが、否定的に捉えてはいません。副業を通じて得た経験や視点が本業に還元され、本人の成長や業務の質の向上につながるものであれば、前向きに捉えてよいでしょう」と語る。
エンターテインメント業界の担当者は「朝から夕方まで会社で働き、さらに夜間・週末に副業しようという社員は、成長意欲・知的好奇心・体力などが高いことは間違いありません。会社勤務だけで疲弊してしまう社員よりも、リーダーとして有望ではないでしょうか」と高く評価する。
筆者が事前に想定していたのと違ったのは、副業によって会社への忠誠心が低下することを懸念する声がほとんどなかったことだ。副業を巡る企業の対応は、業種や担当部署によって大きく異なることが浮き彫りになった。



