「オールド・ボーイズ・ネットワーク」(以下、OBN)という古風な言葉を、最後に聞いたのはいつだっただろうか――そんな思いに駆られる調査結果が公表された。
パーソル総合研究所が「オールド・ボーイズ・ネットワークに関する定量調査」を発表。主に男性を中心に形成された閉鎖的な人間関係や慣習・組織文化=OBNに象徴される組織運営の実態を明らかにした。
「深層の閉鎖性」とは何か
調査では、OBNを「採用や昇進、仕事の割り振り、情報共有、意思決定などにおいて、特定の人間関係や慣習が影響を及ぼす組織運営上の問題」と位置づけた。その上で、性別や年齢など属性の多様化が進んだ職場においても残り得る、組織運営に内在する見えにくい閉鎖性を「深層の閉鎖性」と定義している。
「深層」という言葉には、組織に長く勤めるうちに染み付いた「暗黙の前提」や「集合的な無意識」が含まれている。「閉鎖性」とは「排他性」である。「深層の閉鎖性」と表現することで、女性や外国人といった多様な属性を採用しても、意思決定の回路が閉ざされていれば、結局は元の木阿弥であることを強調したかったのだろう。
この手の量的な社会調査は「解決すべき問題」がある場合にこそ行われるもの。つまり、これだけ女性活躍やDEI(Diversity, Equity, Inclusion)を企業理念に掲げる企業が相次いでいるのに、職場の空気が変わらないと感じる人たちが多いということである。
OBNに苦しむのは女性だけではない
OBNに苦しむのは、女性だけではない。そもそも多様性の推進は一部でしか進んでおらず、性差別への対応でさえ、世界に3周ほど遅れているのが日本の現在地である。
多様性が女性問題に矮小化されたことで「男性が抱える問題」はより深刻になった。子育て世代の30代男性は「仕事も育児もやらなければならない現実」に悩み、育休を取れば冷ややかな差し目を向けられる。親の介護問題を会社に打ち明けることもできず「隠れ介護」という独自の回路に疲弊する中高年男性。女性の多い職場で「力仕事」ばかりを押し付けられ、本来の業務に集中できない少数派の男性社員たち……。
これらの苦しみを生むのは「ジジイの壁」である。女性だけでなく、男性たちもまた、前例主義、教条主義から逸れずに「君のため」と言いながら自分のために権力を使う「壁」の内側の人々との戦いに疲れ切っているのだ。
「ジジイの壁」の実態
「突然『ジジイの壁』ですか?」と感じる読者もいると思うので、簡単に説明しておく。
ジジイの壁とは、2017年に刊行した書籍『他人をバカにしたがる男たち』で用いた表現である。ここでいうジジイとは「年齢や性別に関係なく組織内で権力を持ち、その権力を組織のためではなく自分のために使う人たち」の総称で、彼らが築き上げた古い慣習を守る砦が「ジジイの壁」である。
ジジイは年配の男性とは限らない。女性のジジイもいるし、若者にもジジイはいる。悲しいかな、誰もがジジイ的なものを心の奥底に秘めている。「だったらババアでもいいじゃないか!」と思われるかもしれないが、日本の職場ヒエラルキーの上層階がいまだに「男性」で占められている以上、このまま使わせていただく。
いずれにせよ、ベルリンの壁より固く、チョモランマより高く、強度は鉄をはるかに超えると思われていたジジイの壁が、今後崩壊する可能性はあるのだろうか。
そこで今回は、調査結果を読み解きながら、日本の会社組織が直面している「見えない病気」についてあれこれ考えてみる。
調査結果の要点
前掲の調査で、筆者が気になった結果を抜粋したのが以下の通りである。
- 67.0%が勤務先に「OBNやそれに基づく慣習・組織文化」があると回答
- 勤務先にOBNに基づく慣習・組織文化が「かなりある」と回答した人のうち、94.0%が「深層の閉鎖性」が高いと回答
- 3〜4割の企業において、採用、アサイン・成長機会、評価・昇進、意思決定、働き方、情報共有の各场面で、一部の人間関係や慣習が機会や判断に影響する「深層の閉鎖性」が見られる
- 女性比率の上昇に伴い「深層の閉鎖性」が高い組織の割合は低下する傾向があるものの、女性管理職比率が5割以上でも、3割強の組織で高い状態が残っている
- 「深層の閉鎖性」が高い組織では、低い組織と比べて「外部から来た人が力を発揮しにくい」と感じる人が5倍に
- 「深層の閉鎖性」が個人にもたらす悪影響を性年代別でみると、特に40代女性の「意欲低下」「発言躊躇」「キャリア機会の制約」への影響が大きい
- 「深層の閉鎖性」は、意思決定の速さや組織の安定といったメリットもあるため維持されやすい
- 「深層の閉鎖性」には「ジェンダー役割規範」「変化抵抗性」「長時間コミット規範」が強く影響
並べてみると、これらを簡単かつ象徴的にまとめると「日本企業は瀕死状態にある」ということである。
日本企業はなぜ瀕死状態なのか
かつて日本の職場には、仕事をしているのかいないのか分からないけれど、なぜか周囲に漂う「清香」のような先輩や上司がいた。今、こうした人々の「目に見える活躍」が、再び脚光を浴びている。
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