英ドラッグストアチェーン2位のSuperdrugは、EC(電子商取引)を拡大しながら実店舗も増やし続けている。2025年の売上高は約17億ポンドに達し、5年連続で増収増益を達成した。競合のBootsが店舗ごとにサービスやデザインを変えるのに対し、Superdrugは手頃な価格で美容体験を提供し、SNSで共有する場としての役割を強めている。
売上と店舗拡大の実績
Superdrugの売上高は2022年の13億6700万ポンドから2025年には約17億ポンドに拡大し、3年間の増加率は約24%に上る。2025年の税引前利益は1億4410万ポンドで、5年連続の増収増益となった。英国のハイストリート全体が客数減少に苦しむ中での成長である。
成長の一因は実店舗への積極投資だ。2024年には13店舗を出店し、45店舗を改装。2025年には25店舗、2026年にはさらに30店舗の出店を計画している。
ECと店舗の両立―O+O戦略
一般的なDXでは、ECが伸びるほど店舗は減ると考えられがちだが、Superdrugは逆だ。ECを拡大しながら店舗を大型化し増やしている。背景にあるのが、親会社A.S. Watsonの「O+O」(Offline plus Online)戦略である。
A.S. Watsonは香港のCK Hutchison Holdings傘下で、世界最大級のヘルス&ビューティー小売グループ。12ブランドで世界に約1万7000店舗を展開し、2002年にSuperdrugを傘下に収めた。グループは調達、PB開発、会員データ、デジタル基盤を提供し、Superdrugはそれを英国市場向けに実装する関係だ。
O+Oは、オンラインから店舗へ送客するO2Oとは異なる。A.S. Watsonは、顧客を一方のチャネルに移すのではなく、いつでも、どこでも、どのチャネルでも一体化した体験を提供することと定義している。店舗とECの売上を切り離さず、両方を使う顧客を増やす考え方だ。
店舗での体験型サービス
SuperdrugのO+Oを具現化するのが、大型店に導入されている「Beauty Playground」である。本稿の筆者である郡司昇氏は8店舗を視察し、その中でも新しいManchester Trafford Centre店では、商品を試す「Try Me Tables」、リングライトを備えたSNS用コンテンツスペース、ブランド担当者による説明などを組み込んでいた。
併設するBeauty Studioでは、ネイル、眉、まつげ、ピアッシングなどの施術を提供している。商品を棚から取って会計するだけならECでも可能だが、色や質感を比較し、その場で試し、さらに専門スタッフからアドバイスを受け、施術まで完結する体験は店舗にしかない。
一方、ECは店舗に置き切れない商品を補う。SuperdrugはEC単独の売上高を公表していないが、オンライン・マーケットプレイスは4万1000品以上を掲載し、2024年の売上は前年比107%増となった。店舗では売れ筋と体験価値の高い商品を「編集」し、ECはロングテールを持つ。すべてを店頭に並べるのではなく、棚をオンラインへ拡張しているのである。
顧客の利便性向上
顧客はアプリで店舗在庫を確認し、注文から最短30分で店舗受け取りを利用できる。250店舗以上を拠点にした即日配送にも対応している。店舗は販売場であると同時に、受け取り拠点、配送拠点、サービス拠点にもなっている。
Z世代を「オンラインだけの顧客」と見ず、リアル店舗と連動した施策を展開することで、Superdrugは成長を続けている。



