正露丸は120年にわたり日本人の胃腸を支えてきたが、その有効成分・木クレオソートの効果が科学的に証明されたのは実はそれほど昔のことではない。OTC医薬品の科学的根拠を明確にする基準が導入され、大幸薬品は生き残りをかけて研究を重ねてきた。
科学的根拠の時代へ
かつては「昔から効く薬」として信頼されてきた正露丸だが、新たな基準により有効成分や効能を科学的に判定する時代が到来。木クレオソートは止瀉・整腸系の有効成分群として収載されることとなった。
転機となったのは、現在の社長である柴田高氏の入社だ。創業家の一員でありながら医学の道へ進み、外科医として複数の病院で診療に携わってきた高氏は、医師としての知見と薬理学への理解を持ち込んだ。これにより木クレオソートの研究は大きく前進した。
研究施設の建設と効果の解明
1991年、大幸薬品は基礎研究の充実を目的に大阪府吹田市に研究棟を建設。研究の結果、木クレオソートには腸内の水分分泌を抑制し、大腸の過剰運動を正常に戻す効用があることが確認された。
科学的な裏付けを得たことで、正露丸は「伝統的な下痢止め薬」から「エビデンスのある胃腸薬」へと変わっていった。
市場の現状と課題
戦後、日本で「お腹の万能薬」として広まった正露丸は、現在も止瀉薬市場の約半数を「ラッパのマーク」が占める。しかし、右肩上がりの成長は見込めないという。
「当社の調査では、継続的に下痢止め薬による対処をしている人は全体の7%程度とみています。さらに現在では、子どもの医療が無料になったことなどから、市販薬に触れる機会が減ってきているんです」と大幸薬品は説明する。
コロナ禍以降も会社を支えた正露丸ブランド
新型コロナウイルス感染症の流行以降、衛生意識の高まりや外出自粛により下痢止め薬の需要は変動したが、正露丸ブランドは引き続き会社を支えている。大幸薬品は新たな柱への挑戦と挫折を経験しながらも、正露丸の研究開発を続けている。



