総資産4000億円超のそごう・西武が8500万円で売却された理由
総資産4000億円超のそごう・西武が8500万円で売却された理由

セブン&アイHD傘下だった百貨店「そごう・西武」は2023年、海外ファンドのフォートレス・インベストメント・グループに売却された。売却直前の総資産は4029億円、純資産は267億円あったが、報道によれば株式の譲渡額は8500万円だった。なぜ名門百貨店の株は“タワマン以下”の値段になったのか。財務コンサルタントの村上茂久氏は「会計上の資産価値と、ファイナンス上の企業価値は別物だ。そごう・西武のケースを見ると、セブン&アイが手放した理由と、海外ファンドが描いていた計算が見えてくる」という。

売却劇から3年、企業価値と株主価値の乖離

企業価値を高めることは、株主にとっても望ましい。理論上は、そう説明されることが多い。では、企業価値と株主価値はどう違うのか。改めてこの問いを投げかけられるとうまく答えられない人もいるかもしれない。

事業譲渡や再生の現場では、企業価値と株主価値が大きく乖離している場面が数多く見られる。特にファンドが関与する局面では、そのズレが顕在化しやすくなる。

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そごう・西武の事例は、こうしたズレを象徴するケースだ。事業としての価値、資産としての価値、そして株主にとっての価値。それぞれが異なる評価軸で語られる中で、企業の行き先が決まっていった。

2023年8月31日に売却、金額は8500万円

2023年8月31日、セブン&アイHDの傘下にあった「そごう・西武」の株式が、アメリカの投資ファンドのフォートレス・インベストメント・グループ(以下、フォートレス)に売却された。フォートレスはかつてソフトバンクグループの傘下にあったが、ソフトバンクグループは2023年5月に同社株式の約90%を、アブダビの政府系ファンド「ムバダラ・インベストメント」とフォートレス経営陣に売却している。

報道によれば、その金額は8500万円。いまや都内では1億円のタワーマンションも珍しくないから、老舗デパートが8500万円と聞くと、ずいぶん安い金額だと感じる。そごう・西武の株式は、なぜこれほど安い金額でフォートレスに売却されてしまったのか。

以下では、セブン&アイHDからフォートレスに売却されたそごう・西武について、ファンドのビジネスモデルも含めて考察する。

純資産は267億円、だが売却額は8500万円

まずは、そごう・西武の過去4期分の業績について確認する。そごう・西武は過去4年間の平均で100億円以上の当期純損失を計上している。営業利益については、フォートレスに売却される直前の2023年2月期の決算では黒字化して25億円の利益が出ているが、依然として業績が厳しいことに変わりはなかった。

次にそごう・西武のB/S(貸借対照表)を見ると、2023年2月28日時点における総資産は4029億円。内訳としては、資産全体の14%を流動資産(565億円)が、86%を固定資産(3464億円)が占めている。一方、負債・純資産側を見ると、流動負債と固定負債を合わせて負債が全体の93%を占め、純資産はわずか7%(267億円)だ。

純資産は株主に帰属する価値であり、会計上の簿価は267億円。今回のケースでは、この純資産が、フォートレスに8500万円という金額で売却されたことになる。いったいなぜ、こんなことになってしまうのか。

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