ラッパのマークの正露丸:軍人も嫌う臭さから国民的ヒット商品へ至る紆余曲折の歴史
ラッパのマークの正露丸:軍人も嫌う臭さから国民的ヒット商品へ

ラッパのマークの正露丸は、80年にわたり家庭の常備薬として親しまれてきた。その起源は日露戦争に遡り、当初は「忠勇征露丸」という名称で軍陣薬として使用されていた。しかし、その強い臭いは「軍人でさえ嫌がる」と言われるほどだった。大幸薬品マーケティング部の柴田航部長によると、正露丸はその後、兵士の復員と共に全国に評判が広がり、一気に普及していったという。

戦後から商標登録を巡る闘い

太平洋戦争を経た1946年、大幸薬品が中島佐一薬房から「忠勇征露丸」の製造・販売権を引き継ぎ、1954年に名称を「正露丸」と変えて販売していった。しかし、最初から「正露丸なら大幸薬品」というわけにはいかなかった。日露戦争以後、すでに全国各地で民間薬として製造・販売されていたからだ。

1954年、大幸薬品は特許庁に対し「正露丸」の商標登録を申請、いったんは認められたものの、競合他社より審査決定の無効審判を起こされ、最高裁まで戦うも敗訴という結果に終わった。柴田部長は「正露丸は特定企業の商品名ではなく、一般名称として広く使われていると最高裁に判断され、独占使用が認められませんでした」と振り返る。

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「ラッパのマーク」で差別化

「正露丸」という名称に頼らず、他社とどのように差別化するか――。そこで目を付けたのが、「ラッパのマーク」だった。柴田部長は「ラッパのマークは、『忠勇征露丸』のころからパッケージに描かれていたシンボルです。これを強化することで、『ラッパのマーク=正露丸』というイメージを結び付けようと、1951年からラジオ広告に力を入れ、その後テレビCMにも積極投資したのです」と説明する。

ラッパのマークは、正露丸がもともと「軍陣薬」だったことに由来する。軍用ラッパは、旧陸軍において、食事の時間を知らせるために使われていた。正露丸のCMでよく耳にしたあのラッパのメロディも、その音をモチーフにしているのだという。

音商標の登録とブランド戦略

大幸薬品は、音商標の登録が可能となった2014年の商標法改正を受け、施行初日の2015年4月1日に、「ラッパのメロディ」の商標登録を出願している。柴田部長は「OTC医薬品(市販薬)の広告は規制が厳しく、他社製品と比べて自社の正露丸が優れているといった内容を、十分な根拠なく打ち出すことはできません。そのため、CMでは商品の機能を競うよりも、ブランドイメージを印象づけることに力を入れる必要がありました。当時のCMをよく見ると、ラッパのマークが繰り返し強調されているのがわかると思います」と語る。

言われてみれば、確かにそうだ。記憶をたどると、ラッパのマークだけが盾のようにせり出した、巨大なオレンジ色の着ぐるみが思い浮かぶ。CMの最後は決まって、ラッパの音色と共に「下痢、食当たり、水当たりに、ラッパのマークの正露丸」という言葉で締められていた。

「正露丸」より飲みやすい「セイロガン糖衣」

大幸薬品は、正露丸の強い臭いを改善した「セイロガン糖衣」も発売している。これは、正露丸の有効成分をそのままに、糖衣でコーティングすることで飲みやすさを向上させた製品だ。柴田部長は「正露丸は独特の臭いが苦手という方にも、セイロガン糖衣なら服用しやすいと好評です」と話す。こうした製品展開により、大幸薬品は正露丸ブランドを守りながら、新たな顧客層を取り込んでいる。

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