リモートか対面か、人材獲得の一大選択 コロナ後、出社回帰に反発も
リモートか対面か、人材獲得の一大選択 コロナ後、出社回帰に反発も

IT大手LINEヤフーが5月、東京・赤坂に「赤坂オフィス」を開設した。6~26階の計16フロアに全7000人分のデスクを用意し、ラウンジやレストラン・カフェなど交流を促す空間を設けた。背景には、コロナ禍で導入したフルリモート勤務から、今年5月に原則週3日の出社義務化への方針転換がある。

出社回帰への反発、組合加入者が急増

昨年4月に週1回または月1回の出社を求め、今年5月から原則週3日程度の出社を義務づけた。出沢剛社長は2024年12月の説明会で「対面での議論も取り入れることで、偶発的な出会いやコラボ、創造性を促し、新しい製品や文化を生み出したい」と訴えた。

しかし、一部の社員から「遠方に家を購入しているので通えない」「育児をしているので免除してほしい」と反発の声が上がり、労働組合への加入者が急増。23年まで20人程度だったが、ピーク時には約300人に膨らんだ。

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組合は出社回帰により26年3月末までの1年間で約500人が退社した可能性があるとみており、委員長の男性は「優秀な社員が退社し、その穴埋めをするため残った社員にかなりの負荷がかかっている」と懸念する。会社側は「現時点で方針変更の予定はないが、引き続き必要な対応を検討していく」とコメントした。

業界全体で広がる出社回帰、一方でリモート維持も

IT業界を中心に出社回帰の動きが相次ぐ。GMOインターネットグループは在宅勤務を7月に原則廃止。熊谷正寿会長兼社長はXに「データ上、PCタイピング数は確実に減少。トータルで在宅勤務はマイナス」と投稿し、後に表現が過剰だったとおわびしたが、原則廃止は変更しないという。

米国でも、メタが23年から週3日の出社を義務づけ、アマゾン・ドット・コムは25年から原則週5日出社へ移行した。パーソルキャリアの調査では、26年度の出社頻度が増えるとの回答が75.5%に上る一方、理想の働き方としてリモート派が46.8%を占めた。

リモートを維持する企業の選択

NTTグループは22年に「リモートスタンダード」を導入し、自宅勤務を標準として、オフィスへの出社は「出張」と位置づける。NTT西日本の宮良瞳さんは、所属は大阪の本社だが、沖縄県沖縄市の自宅で勤務。3人の子どもがおり、単身赴任が難しいためリモートを選んだ。「早めに仕事を終えて、子どもを迎えに行くなど、生活の軸を家族に合わせやすい。リモートでも十分に成果は生み出せる」と話す。

さくらインターネット(大阪市)はフルリモートを継続。社長の田中邦裕さんは、GMOの在宅廃止を受け、Xに「経営者の都合よりも、社員の働き方の多様性を活かして、社員に選ばれ続ける会社作りに努める」と投稿した。広報担当者によると、25年度採用の約8割が中途採用で「フルリモートも魅力の一つ」とみている。

大和総研の溝端幹雄主任研究員は「リモートを活用した柔軟性の高い勤務形態は人材をひきつける要因となりうる。一方、リモートを効果的に活用するには、それに適した業務かどうかを見極める必要がある」と指摘する。

リモートワークの広がりと快適性の価値

リモートワークは2019年の働き方改革関連法で導入が広がり、コロナ禍で急速に普及した。リモートワークが提供する快適性(通勤時間の節約、疲労感の軽減、静かな環境など)は賃金換算で8%程度と推計される研究もある。

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