フィリップスのインパクト評価モデル:3軸で可視化する社会的価値
企業が社会や環境に与えるプラスの影響を測定し、価値として可視化する「インパクト評価」への関心が急速に高まっている。従来のESG(環境・社会・企業統治)評価がリスク管理に主眼を置くのに対し、インパクト評価は企業活動がもたらすポジティブな変化そのものを捉え、財務リターンとの両立を目指す点が特徴だ。金融庁や日本経済団体連合会(経団連)も指標・データの整備を進めており、開示の枠組みづくりが本格化している。
本連載第3回では、オランダのヘルスケア製品・医療機器大手であるコーニンクレッカ・フィリップス社(フィリップス)の事例を基に、Richmond Global Sciences(RGS)が提唱する3軸での評価結果活用法を解説する。
フィリップスの例示モデル:3軸と貨幣換算
「環境に配慮している」「社会貢献に取り組む」といった抽象的な表現では、ステークホルダーの期待に応えることは難しい。企業は自社が社会・環境にもたらす影響を具体的な数値で示し、価値創造に結びつけることが重要だ。近年、サステナビリティが一般化しESGが普及する中、企業には数値に基づく説明が求められている。
RGSが提唱する手法を用いた先進事例として、フィリップスのインパクト評価モデルは、企業のインパクトを「環境」「従業員」「顧客」の3軸で示し、外部データに基づいて貨幣換算する点が特徴だ。例えば、温室効果ガス(GHG)排出の評価には国際インパクト価値評価財団(IFVI)のGHG排出係数を用いるなど、算出根拠の透明性を重視している。
実際に算出した結果、フィリップス全体のトータルインパクトは70億7000万ドルのプラスとなった。この数値は、同社が社会・環境に対して純粋にプラスの影響を与えていることを示している。
優秀な人材獲得にも有効:社会的価値と財務リターンの両立
インパクト評価の活用は、投資家向けの情報開示にとどまらない。優秀な人材の獲得にも有効だ。現代の労働市場では、特に若い世代を中心に、社会貢献への意識が高い人材が増えており、企業の社会的価値を明確に示すことは、採用競争において大きな優位性となる。
フィリップスの事例は、インパクト評価が企業価値の向上と優秀な人材の確保に寄与することを示している。同社の取り組みは、社会的価値と財務的リターンの両立が可能であることを実証しており、他の企業にとっても参考になるモデルケースと言える。
金融庁や経団連が主導する開示の枠組みづくりが進む中、インパクト評価は今後ますます重要性を増すと予想される。企業は自社のインパクトを正確に測定し、それを戦略に組み込むことで、持続可能な成長を実現できるだろう。



