個人預金が大流出の危機、預金争奪戦の敵は「個人向け国債」だった
個人預金大流出危機、敵は個人向け国債

個人向け国債が銀行預金を脅かす

「個人向け国債を購入したいのですが」――夏のボーナスシーズンを迎え、多くの銀行が定期預金キャンペーンを展開する中、大手行の支店長は「定期預金とは異なる相談が増えている」と明かす。その相談とは、預金と同様に安全資産とされる「個人向け国債」に関するものだ。

現在の利回りを見ると、2026年7月募集分の個人向け国債(固定5年)は1.95%であるのに対し、銀行の5年定期は0.7%程度にとどまる。金利上昇を背景に、従来なら定期預金に回っていた余裕資金が、より高い投資妙味を持つ個人向け国債にシフトし始めている。

財務省の想定を上回る販売額

実際、個人向け国債の販売額は財務省の想定を大幅に上回って推移している。財務省は2026年度の個人向け国債発行額を5.9兆円と見込んでいたが、26年4~6月の発行額は既に2.4兆円に達し、年間換算で10兆円近くに迫る勢いだ。

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個人向け国債の市場拡大は、銀行にとって個人預金の流出につながる厄介な存在となっている。東洋経済の記者、北山桂氏は「預金争奪戦の本当の敵は『隣の銀行』ではなく、『個人向け国債』だった」と指摘する。

銀行預金の増加にブレーキ

「貯蓄から投資」の流れが強まる中、そもそも銀行の個人預金は増えづらい状況にある。コロナ禍の2021年3月期には全国銀行の個人預金が前年同期比7.23%増加していたが、2026年3月期はわずか1.97%増にとどまった。信用金庫に至っては4.09%増から0.27%減に転じている。

法人でも借入金利の上昇によって手元資金を取り崩す傾向が強まっており、公金預金では基金などの待機資金を国債に振り向ける動きが加速。預金全体の増加に強烈なブレーキがかかり始めた。そこに個人向け国債の人気上昇が追い打ちをかけている。

100兆円規模の資金シフトの衝撃

専門家は、今後3年間で最大100兆円の資金が預金から個人向け国債などにシフトする可能性を指摘する。SBI新生銀行などネット銀行には追い風となる一方、預金競争は異次元のステージへと突入する見通しだ。

財務省は国債安定消化の「切り札」として個人向け国債の普及を進めてきたが、その成功が銀行預金の流出を加速させている。今後の預金争奪戦は、銀行間の競争だけでなく、国債という新たな敵との戦いを強いられることになる。

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