真面目に働いているのに、なぜ仕事は減らないのか。資料を完璧に仕上げ、チャットにはすぐ返信し、進捗をこまめに確認する。どれも丁寧で誠実に見えるが、それぞれに問題があるという。日本能率協会マネジメントセンター(編)『なぜか余裕がある人のやらない技術』から、仕事を増やさないための術を紹介する。
「完璧な資料」を作らなくていい
資料を開いた瞬間に、「量が膨大で読み切れない」と圧倒された経験はないだろうか。丁寧に整理されているはずなのに、やたらとページ数が多く、どこから理解すればいいのかがつかめない。そうなると受け手の集中は緩み始め、説明する前から要点を探す姿勢に切り替わってしまう。資料は、完璧なデータを見せるものではなく、業務を伝達するためのものだ。
資料づくりでは、「抜け漏れがないこと」が正しいとされがちだ。背景、経緯、データ、補足――あらゆる情報を揃えれば、相手を納得させられるはずだという発想がある。しかし実際には、情報が増えるほど受け手は取捨選択を強いられる。どれが重要でどれが関連が薄いか、受け手が判断しなければならないのだ。つまり、資料の完成度を高めようとあらゆる想定を網羅するほど、受け手側に理解の負担がかかる。
たとえば、過去のデータや競合比較、想定リスクまで丁寧に盛り込んだ、新施策の提案資料のケースを考えてみる。どれも必要な情報だが、選択せずにすべて列挙していくと、結論にたどり着くまでに時間がかかる。受け手は「結局どうしたいのか」をつかめないまま読み進めることになり、途中で集中が切れてしまうことにもつながる。
また、資料を簡潔にまとめたつもりが、「説明不足ではないか」「完成度が低く見えるかもしれない」と不安になり、スライドを追加してしまうこともある。こうして補足が増えると、資料全体の重心がぼやけていく。結果として、伝えるべき軸が曖昧になり、どれだけ丁寧に説明しても、聞き手が整理しにくい状態になってしまう。
「8割で出す」を意識して
資料の役割や求められる情報は、場面によって変わる。意思決定の場では結論と判断材料が重視され、共有の場では全体像が求められる。また、見る側の立場や目的によっても必要な情報は異なる。
そうなると「誰にとっても完璧な資料作成」自体が現実的に難しくなるため、どの場面にも最適化されない中途半端な構成になりやすい。
完璧さを求めるほど時間がかかり、推敲のタイミングを逃してしまう。時間をかけて細部まで整えた資料でも、状況が変わればすぐに古くなる。最終的な相手に見せる前に、修正期間を確保するためにも、早めの提出が欠かせない。にもかかわらず、「まだ不十分ではないか」という感覚から調整を続けると、提出が遅れ、目的のための修正の機会を失ってしまう。
見直すべきは完成度ではなく役割だ。資料はすべてを説明するものではなく、判断や理解を進めるための道具である。結論と軸を据え、必要な情報だけを載せる。詳細はあとから補足できると割り切り、資料は「8割で出す」という意識に切り替える。そうした不要を削ることで本質が整う。
「即レス」はやめていい
「常に対応する人」となり、仕事が増え続ける。メールやチャットへの即レスは、相手にとっては便利でも、自分にとっては常に中断される状態を生む。細かすぎる確認が仕事を止めている側面もある。「丁寧な仕事」の実感がスピードを落としているのだ。
仕事を増やさないためには、完璧を目指さず、8割で出す意識を持ち、即レスをやめ、確認を適度にすることが鍵となる。



