全国に店舗網を持つある企業で、中古車をインターネットで販売する新規事業が提案された。しかし、社内の反応は冷ややかだった。「ネットでクルマが売れるわけない」というのが大方の見方である。一台ごとに状態が異なり、数百万円の高単価商品を、写真と説明文だけで購入する消費者がいるとは思えなかったのだ。
社内の懐疑論と立ちはだかる壁
会議室では「そんな高い買い物をネットでする人がいるのか」「ノウハウがない」「ECサイトすら作れない」といった疑問が次々と上がった。中古車ECはネット通販の“鬼門”とされており、社内の冷ややかな空気は当然とも言えた。
そんな中、プロジェクトを任されたのは、中途入社した42歳の担当者だった。情に厚く冷静さも持ち合わせ、会社文化に溶け込もうと努力していたが、大きな弱点があった。中途入社ゆえに社内に人脈がなく、新しいことを動かすには大きなハンデとなった。
現場に足を運び、強みを活かす戦略
彼は理想を声高に語るのではなく、まず現場に足繁く通った。店舗スタッフや整備担当者と交流し、何が難しく、何が可能かを自分の目と耳で確かめた。その結果、たどり着いたのは「それぞれが得意な仕事をする」というシンプルな方針だった。ネットとリアルを切り離さず、両方を活かすことで、相乗効果を狙った。
わずか1年で売上1億円
このアプローチが奏功し、プロジェクトはわずか1年で売上1億円を達成。さらに、ネット事業の成功がリアル店舗の復活にもつながった。伊藤祐太氏は「ネットはリアルがあってこそ生きる」と強調する。
成功のカギは、数字でわかりやすく判断すること、適切な広告で顧客を呼び込むこと、そして社内の反対を乗り越える粘り強さだった。『世界最強のEC戦略』の著者でありAmazonトップコンサルタントでもある伊藤氏は、この事例を通じて、ネットとリアルを融合したEC戦略の重要性を説いている。



