2024年以降、日本の株式市場ではAI関連株が相場をけん引してきました。AI向け半導体を手掛ける米NVIDIA(エヌビディア)の急成長を背景に、国内の半導体関連株も大きく上昇したことは記憶に新しいでしょう。しかし、市場の関心はすでにAIの次を見据えた新たな成長テーマへと広がりつつあります。そこで今回は、AI・半導体に加え、今後の成長が期待される注目業界や有望テーマを紹介します。
AI・半導体は今後も中心テーマに
生成AIブームは一過性のものではなく、企業の業務効率化をはじめ、医療、ロボット、自動運転など幅広い分野へ広がっています。その基盤となる半導体の需要も一時的なものではなく、数年にわたる「スーパーサイクル」に入ったとの見方もあります。
日本でもAI向け半導体や半導体製造装置への需要は拡大しており、中長期的な成長が期待されています。
一方で、株価が大きく上昇したことから、AI関連への過剰投資を警戒する見方もあり、実際、関連銘柄が大きく調整する場面もあります。今後は業績を伴う企業とそうでない企業との選別が進む可能性があります。
こうしたなかで注目され始めているのが、「AIを支える産業」です。
AI普及で注目される電力・インフラ関連
生成AIは、大規模データセンターによって支えられています。AI利用が拡大するほど、サーバー需要も拡大し、膨大な電力が必要となります。
国際エネルギー機関(IEA)は、2025年の報告書で、世界のデータセンターの電力消費量は2030年までに約9,450億kWhと2024年の水準から倍増するとの見通しを示しています。
こうした状況から期待されているのが電力インフラ関連企業です。具体的には、電力会社のほか、変電設備や送配電設備を手掛ける重電メーカー、電線メーカー、電力設備工事会社、冷却設備メーカー、データセンターの建設・運営に携わる企業などです。
国内では日立製作所や住友電気工業、三菱電機など、電力インフラ関連企業への注目が高まっています。市場では「半導体の次はAIインフラ」という見方も増えています。
防衛関連は長期テーマに
もう一つ注目されているのが防衛関連です。
ロシア・ウクライナ情勢や中東情勢など、地政学リスクが高まるなか、各国では防衛費の増額が進んでいます。
日本でも2026年度の防衛関係費は過去最大となる約9兆円を計上しました。日本はロシアや中国、北朝鮮と地理的に近く、安全保障環境の変化に対応すべく防衛力の強化を進めていることが背景にあります。
防衛関連企業とは、防衛省をはじめとする官公庁向けに装備品やサービスを提供する企業です。具体的には、防衛装備品やレーダー、航空機、ミサイル、艦船などを手掛ける企業が挙げられます。
政府による安定した需要が見込めることに加え、防衛技術の高度化や海外市場への展開も期待されており、中長期的な成長テーマとして注目を集めています。
その他の注目テーマ
このほかにも今後期待できる注目テーマがあります。短いコメントとともに紹介します。
- フィジカルAI - ロボットや車などに搭載し、実世界で判断・行動するAI技術のことです。生成AI、AIエージェントに続く、AIの第3のフェーズとして注目されており、市場の拡大が期待されています。
- ロボティクス - フィジカルAIが「頭脳」なら、ロボティクスは「体」に当たる技術です。人手不足を背景に、製造業をはじめ、物流、農業、医療など幅広い分野での普及が期待されています。
- ヘルスケア - 高齢化社会を背景に、医療や介護、創薬などヘルスケア市場は今後も拡大が見込まれています。
- サイバーセキュリティ - デジタル社会において、企業や社会インフラをサイバー攻撃から守るサイバーセキュリティ市場は、今後も成長が期待されています。
- 次世代エネルギー - 太陽光発電、風力発電、水素・核融合(フュージョン)エネルギーなど、環境に優しく枯渇しないエネルギーのことをいいます。世界各国で研究開発や実用化に向けた投資が進んでいます。
- 次世代原子力発電 - 次世代エネルギーのなかでも最近話題となっているのが、次世代原子力発電「SMR(小型モジュール炉)」です。従来より小型で安全性や建設性を高めた次世代の原子炉で、AI普及による電力需要の増加を支える電源として注目が集まっています。
- 宇宙 - ロケット打ち上げコストの低下や民間企業の参入が進み、宇宙ビジネスは成長期を迎えています。AIや通信技術との融合による新たな市場の拡大も期待されています。
- ブルーエコノミー - 海洋資源を持続可能な形で活用し、経済成長につなげる取り組みです。洋上風力発電や海底資源、養殖、海洋バイオテクノロジーなど幅広い分野で市場の拡大が期待されています。
一つのテーマに集中しすぎない
話題性だけでテーマ株を選ぶと、大きな値上がりが期待できる一方で、期待が先行し過ぎると株価が急落することもあります。テーマ株は短期的な値動きが大きくなりやすいため、一つのテーマに集中せず、複数のテーマに分散して投資することが大切です。
また、同じテーマ株だからといって、どの銘柄でもいいわけではありません。企業の業績や成長性、株価が割高ではないかなどを確認したうえで投資先を選びましょう。
AIブームであれば、半導体だけでなく、その先にある電力やインフラにも恩恵が及ぶなど、一歩先まで視野を広げることで、新たな投資機会を見つけることができます。社会や産業の大きな流れを捉えることが、長期的な資産形成につながるでしょう。
石倉博子 いしくらひろこ ファイナンシャルプランナー(1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP認定者)。“お金について無知であることはリスクとなる”という私自身の経験と信念から、子育て期間中にFP資格を取得。実生活における“お金の教養”の重要性を感じ、生活者目線で、分かりやすく伝えることを目的として記事を執筆中。



