奈良県平群町のメガソーラー造成現場で、2025年6月までに4回目の土砂流出が確認された。斜面は山肌がむき出しになり、下流域の住民は「熱海のような土石流が起きないか」と不安を訴えている。奈良県は2025年12月、林地開発許可取り消しをめぐる訴訟で上告を断念したが、事業者側は最高裁に上告しており、工事は依然として止まっていない。
住民が求めた安全対策、県の対応は
国土問題研究会が山下知事に提出した「平群メガソーラー開発地の危険回避に関する意見書」は、「今後のさらなる降雨による災害発生を防止するため、奈良県は事業者に対し、緊急対策と恒久的な対策に向けた基礎データの収集を指示するべき」と述べた。緊急対策として「開発区域外への流出を防ぐ沈砂設備の配備」、基礎データ収集として「盛り土崩落場所の詳細調査や盛土内の地下水位観測など」を挙げ、抜本対策には洪水調整池の作り直し、斜面排水路の作り直し、暗渠排水路の追加が必要としている。
しかし、県が上告を断念した後も事業者は対策を十分に行っておらず、2025年6月には4度目の土砂流出が発生。下流域の椿台地区では、住民らが「林地開発許可の取り消し」を求めて提訴し、2024年の奈良地裁判決では住民側が敗訴したが、2025年6月18日の大阪高裁判決で逆転勝訴した。ところが、事業者が最高裁に上告したため、裁判は継続中だ。
「天気予報聞くたび不安」住民の声
椿台に住んで29年になる日浦和世さん(75歳)は、2025年12月の控訴審口頭弁論で意見陳述を行い、「つい最近、新聞に次のような記事がありました」と切り出し、政府が2027年度からメガソーラーの新規事業に対するFIT制度を廃止する方針に触れた。その上で「では新規事業ではない、平群のメガソーラーのことはどうなるのでしょうか」「これからの椿台が不安なく暮らせる場所でありますよう、司法の良識ある判断をお願いしたい」と訴えた。
大阪高裁判決後、日浦さんは知人から「良かったね、ニュース聞いたよ」「もう(工事は)止まるんやろ」と言われたが、事業者の上告で裁判は続く。「熱海の土砂災害のようなことが起きないか、不安でたまらない。天気予報を聞くたびに、また土砂が流出するのか、もっと大きな土石流になって椿台に来たらどうしようと心配です」と話す。
工事継続の背景と今後の課題
メガソーラー事業はFIT制度の下で全国に広がったが、平群町の事例は急峻な斜面での大規模造成がもたらすリスクを浮き彫りにしている。専門家は「林地開発許可の基準が甘く、事業者の責任を追及する仕組みが不十分」と指摘。県が上告を断念したことで、住民側は「県が事業者を監督する責任を放棄した」と批判している。
今後、最高裁の判断が注目されるが、工事が続く限り土砂流出のリスクは去らない。住民は「司法が早期に決着をつけ、安全を確保してほしい」と訴えている。



