熊本地震、観光業に大打撃 宿泊キャンセル20億円超 鹿児島・宮崎にも波及
熊本地震、観光業に大打撃 宿泊キャンセル20億円超 鹿児島・宮崎にも

熊本地震は観光業にも大きな影響を及ぼしている。余震への不安から、熊本県内で被害が比較的小さかった地域でも観光客が減少し、県全体の宿泊予約キャンセル金額は20億円を超えた。隣県の鹿児島県や宮崎県にも影響が広がっており、観光関係者からは影響の長期化を懸念する声が上がっている。

阿蘇地域のキャンセルは全体の4割

全国的に知られる観光地、熊本県の阿蘇地域。地震で阿蘇市と南阿蘇村は最大震度5弱を観測した。大きな被害は確認されなかったものの、観光に携わる人々の表情は暗い。

南阿蘇村の老舗旅館「地獄温泉 青風荘」は、安全確認と余震警戒のため3日間休業した後、営業を再開した。しかし、地震直後から余震の不安などを理由に宿泊キャンセルが相次ぎ、14日までに約100組に上った。12月の予約もあったという。損失額は既に900万円以上となっている。

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青風荘は2016年4月の熊本地震で宿泊棟や温泉に被害が生じ、2020年に復旧。コロナ禍も乗り越えた矢先の地震だった。河津誠社長(64)は「自粛ムードがあるのではないか。復興のためにも安全が確認された地域に足を運んでほしい」と気丈に話した。

阿蘇市の「道の駅阿蘇」も地震直後、利用客が例年からほぼ半減。2週間以上経過しても7、8割にとどまっており、広報担当の荒木和行さん(63)は「今年の夏は混雑を心配していたほどなのに……」と嘆いた。

熊本県によると、地震発生当日の7月28日から8月6日に受け付けたホテルなどの宿泊キャンセル金額(暫定値)は、県全体で20億6300万円に上った。

鹿児島・宮崎にも波及、交通網の復旧が課題

地震被害は宇城市、八代市など県中部から南部にかけてのエリアで大きかった。一方、北東部の阿蘇地域のキャンセル金額は7億8800万円で全体の4割を占めた。西部の天草地域も2割にあたる4億6500万円に上り、県は「県全体の観光に影響が出ている」と懸念する。

影響が広範囲に及んでいる要因として、余震への不安に加え、九州新幹線や南九州道の一部区間の運休・通行止めが再開のめどが立たず、道路渋滞など交通事情が悪化していることがあるとみられる。

熊本県南部に接する鹿児島県の観光地でも交通アクセスの制限が響いている。「いおワールドかごしま水族館」(鹿児島市)は、例年は夏休みの親子連れで混雑するが、地震発生から1週間の来館者数は前年比で約3割減。同館企画営業課の検見崎温久課長(60)は「明らかに来館者が少ない」と肩を落とす。

城山ホテル鹿児島(同)も10日時点で、9月までの約5300人分の予約がなくなった。運営会社の渡千左代専務執行役員は「新幹線が全線復旧しないと秋の行楽シーズンまで影響が長引く」と不安を口にした。

宮崎県も客足が遠のいており、県ホテル旅館生活衛生同業組合によると、3日時点で宮崎市など県内116施設で約1万人分の宿泊キャンセルが出た。

行政への支援要望、過去の教訓を踏まえた対応

観光事業者からは行政に支援を求める動きが出ている。12日には熊本県のホテル・旅館関係者が県に対策を要望した。

県の資料によると、2016年4月の地震では、翌5月末までの県内の宿泊キャンセルは33万人超、経済損失額(推計)は380億円超に達した。県は今回も同様の事態が起きることを警戒し、国と連携した観光支援を検討。木村敬知事は「熊本に『来て応援』をしてほしい」と訴える。鹿児島、宮崎両県も支援を検討している。

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2024年1月の能登半島地震で被災した石川県でも、県全体の観光に影響が出た。その際、県は国の助成を受け、宿泊費の補助事業を展開。8か月間で延べ約49万人の客が利用した。県観光戦略課は「旅行需要の喚起に役立った」と話す。

東京女子大の広瀬弘忠名誉教授(災害リスク学)は「観光は被災地の経済を元気づける支援になる。観光客を受け入れられる自治体は歓迎していることを積極的に発信し、国も宿泊費助成などを迅速に行うべきだ」と話している。