JR西日本の会員サービス「WESTER(ウェスター)」が、スタートから約6年で会員数1300万人を突破した。列車やホテルの予約に加え、独自のコード決済やポイントが利用できる総合サービスとして、沿線地域の暮らしを支える基盤を目指している。
「WESTER」誕生の背景と名称のこだわり
ウェスターは2020年、列車の時刻表や経路を調べるアプリとして提供が始まった。複数の交通手段を組み合わせ、ルート検索から決済まで一括で行える次世代移動サービス「MaaS」の展開を見据えていた。
名称を決める際、当初は知名度を生かした「JR西日本アプリ」とする案もあったが、自社名を前面に出せば他の交通事業者との連携が難しくなる。開発チームは「西」を意味する「WEST」と「使いこなす」という意味の「MASTER」を組み合わせることを思いついた。
チームを率いたWESTER-X事業部次長の内田修二(49)は「西日本を中心に幅広い事業者が参画できるようにし、様々な機能を持たせたかった」と振り返る。
コロナ禍を契機に総合会員サービスへ発展
コロナ禍が総合的な会員サービスに発展する契機となった。乗客が激減し鉄道を軸とする事業が苦境に陥り、収益基盤の拡大に迫られた。
第1弾として着手したのは、グループ内でバラバラだったポイントサービスの統合だ。鉄道や商業施設、ホテルなどの利便性を高める狙いで「ウェスターポイント」と名付け、2023年にスタートした。例えば、JR大阪駅前の商業施設「ルクア」で買い物をしてためたポイントは、交通系ICカード「ICOCA」へのチャージやホテル「グランヴィア」での支払いに使える。
2023年に500万人だった会員数は、2026年5月に1300万人を超えた。
独自コード決済「Wesmo!」とデータ活用
鉄道会社で初となる独自のコード決済サービス「Wesmo!」も、2025年5月に導入した。沿線を中心に全国160万超の店舗のほか、鉄道のチケット予約サービス「e5489」に使え、ウェスターポイントもためられる。
独自の決済サービスにこだわったのは、購買履歴や購入店舗といったデータを数分のうちに分析できるからだ。旅行中の利用者に対し、アプリ上でおすすめの土産物や観光スポットの情報を配信することができる。
同事業部担当部長の河原畑俊一(48)は「地域と密接に関わる移動、交通のノウハウを生かし、支持を得られるサービス作りをしていきたい」と意気込む。
金融分野への進出と地域循環の構想
次に狙うのが金融分野だ。資本業務提携を予定する関西みらい銀行と連携し、2027年度中に新たな銀行サービス「WESTERミライバンク」を始める。ミライバンクの口座やウェスターポイントの管理のほか、WesmoやICOCA、JR西日本のクレジットカード「J-WESTカード」が一つのアプリで利用できる「おさいふWESTER」の構想も進めていく。金融商品の購入や住宅ローンの支払いもポイントの対象に加える方針だ。
2030年度までに50万口座の獲得を目指す。将来的には、ウェスターのサービスを通じて沿線に住む人や企業を結びつけ、域内に資金を循環させることで地域の活性化につなげる青写真を描く。
内田は「様々な事業者と連携し、幅広い人たちとつながれる『ウェスターワールド』を広げていきたい」と語る。



