日本の大手商社が世界の航空機リース事業に注力している。航空旅客需要の増加が見込まれることが背景にある。航空会社も財務や事業の柔軟性を得られることから、所有よりリースの比率を高めている。
SMBCAC、200機発注で世界2位に
アイルランドの首都ダブリンにある空港の格納庫で、航空機リース大手SMBCアビエーションキャピタル(SMBCAC)の技術トップ、ポール・コレラン氏は「ある航空会社との契約が終わって次の航空会社に引き渡すため、整備や修理をしている。新たなシートアレンジやWi-Fiなどの要求にも応える」と説明した。世界中の航空会社に機体を貸し出すビジネスを展開しており、世界で連携する100社近くの施設で整備する。
住友商事と、同社が間接出資するSMBCACなどは今年4月、米航空機リース大手エアリースコーポレーションを約74億ドル(約1兆2000億円)で買収した。SMBCACは今夏には、2大航空機メーカーの米ボーイングと欧州エアバスに計200機を発注した。両社の昨年の年間受注数の1割に当たる。
これにより、SMBCACとエアリースが保有する機体(発注分を含む)は合計で約1900機に上り、航空機リースで世界2位につける。世界1位はアイルランドのエアキャップで約2000機だ。
成長期待とリース比率の上昇
住友商事の上野真吾社長は今月、SMBCACの25周年を記念して訪れたダブリンで読売新聞の取材に応じ、「機体数はトップの会社にかなり肉薄している。(航空会社から売ってもらってリースで貸す)セールアンドリースバックや、新たな発注をすれば、2000機超えは十分あり得る」と世界一を視野に入れる。
住友商事が航空機リース事業を重視するのは、自社の強みがあることに加え、今後の成長が期待できるからだ。世界の航空機数は現在の約3万5000機から、20年後には5万機を超えると想定される。世界の経済成長に伴い、新興国を中心に航空旅客数が伸びることが確実視されているためだ。
航空機に占めるリースの割合も増える見通しだ。リースは、航空会社が航空機を所有しないで済み、1機あたり数百億円に上る機体の初期費用を抑えて財務負担を軽減できるほか、路線や機体などの事業計画を機動的に運営できる。かつては主流でなかったリース比率は年々高まり、現在約5割に達している。今後もさらに拡大すると見込まれる。
他商社も出資、課題も
航空機リース事業には、他の大手商社も熱視線を送る。航空機の供給に対し、航空会社による需要が大きいため、リース料は上がり続けている。英航空情報会社シリウムによると、大型のワイドボディー機のリース料は昨年、平均で14%上昇した。
伊藤忠商事は6月にアラブ首長国連邦の航空機リース、シリウスアビエーションに37・5%を出資すると公表した。8月には、米航空機リース大手アビエーション・キャピタル・グループ(ACG)に約3000億円を出資して株式の50%を保有すると発表した。双日は5月に、航空機リースなどを手がけるジャパンインベストメントアドバイザー(JIA)に約2割出資して持ち分法適用会社化すると発表した。
航空機リース事業の先行きには懸念もある。足元で見られる世界的な長期金利の上昇は、航空機を仕入れるリース会社の財務を圧迫する。世界で見られる地政学リスクや貿易摩擦は、サプライチェーン(供給網)を寸断したり、航空旅客需要自体を縮小させたりする可能性もある。英国のオジエ法律事務所のパートナー、ジョン・ペリー氏は「サプライチェーンの信頼性やマクロ経済の不確実性などは課題だ」と指摘する。
航空機リース産業は、世界の上位企業が軒並み本社を構えるアイルランドが中心地だ。アイルランド企業だけで世界の航空機リース機体の半数を保有する。アイルランドの大手航空会社に勤務していたトニー・ライアン氏が1975年にビジネスチャンスを見いだし、初期の航空機リース会社ギネス・ピート・アビエーション(現エアキャップ)を起業したのが始まりだ。その後、関連する人材や取引などのエコシステム(経済圏)が築かれた。公用語が英語で、欧州連合(EU)に所属し、低い法人税率。ビジネスのしやすいアイルランド経済の動向も注目される。