観光業が「働いてよし」の職場に変わるには スイスと日本の現場から
観光業が「働いてよし」の職場に変わるには スイスと日本の現場から

JR天童駅から1キロほどの場所に温泉旅館が立ち並ぶ。2026年2月13日午前8時1分、山形県天童市で撮影された。20分、30分……。チェックインカウンターの前に、長い行列ができていく。待つ人たちのいらだちが、見る間に高まっていく。「なんで待たないといけないの?」と、スタッフに詰め寄る人たちが出てくる。

大阪市内の大型ホテルで働く男性(39)は、そんな場面にしばしば出くわす。「人手は限られるから、フロントにずっと人を張りつけておくわけにはいかない。たまたまお客さまが一気に来ると、どうしようもない」と話す。いらだちをぶつけられても、謝るしかない。それに耐えられないスタッフたちは、辞めていく。それがまた、現場の人手不足を呼ぶ。

男性は言う。「3年以内で3~4割はやめる。お客さんとのコミュニケーションで、気持ちをやられる子が一番多い」

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「働いてよし」の観光産業へ 政府が新計画を閣議決定

2025年に訪日外国人が初めて年間4千万人を超え、盛り上がる観光産業。でもその裾野では、働き手が足りていない。政府の新たな「観光立国推進計画」で、「『働いてよし』の観光産業の実現」が打ち出された。どうすれば「働いてよし」を実現できるのか、「観光先進国」スイスと日本の現場から探った。

「住んでよし」「訪れてよし」に加えて、「働いてよし」の観光産業に――。3月に政府が閣議決定した第5次観光立国推進基本計画に、初めてそのような文言が盛り込まれた。第1次の計画ができたのは、07年だった。長く停滞していた日本経済を浮上させる原動力にするねらいだった。当時700万人台だった訪日外国人客を、1700万人余りだった日本人海外旅行者数と同じぐらいまで増やすことを、将来的な目標とした。

人手不足と持続可能性 観光業が直面する課題

それから20年近くたち、観光をめぐる状況は様変わりした。25年の訪日外国人は、日本人の海外旅行者数(約1470万人)を大幅に上回り、4千万人を超えた。いま政府は30年に訪日外国人を6千万人、訪日客の旅行消費額を15兆円にする目標を掲げる。だが、それほどの人たちを受け入れきれるのか。問われているのは、産業としての持続可能性だ。

25年の厚生労働省の統計で、観光業の人手不足の実態が浮き彫りになっている。スイスの「ホテル大学」卒業生の進路にも異変が起きており、観光業は世界で人手不足に問われる産業となっている。現場からもてなされた経験のない若者が増加する中、観光業が選ばれるための一手が模索されている。

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