多くの工場が集まる大阪府東大阪市に、異色の歴史を持つ町工場がある。それが友安製作所だ。かつて従業員が5人にまで縮小し、一時は自社でのものづくりから事実上撤退。3代目の友安啓一郎CEOのもと、輸入インテリアのEC事業へとかじを切ってV字回復を果たし、そののちに製造業を再開した。
世界的デザイン賞で最高賞
再開からわずか数年で、同社が開発する掃除道具シリーズ「BRUSHUP」は「iFデザインアワード2025」で最高賞の金賞を受賞した。iFデザインアワードは工業デザインを対象とした国際デザインコンペティション。2025年は世界から約1万1000件の応募が集まり、その中で金賞に選ばれたのは75件のみだった。
「同時に受賞したのはiPhone16やフェラーリなど。名だたる企業が並ぶ中で『Tomoyasu seisakusyo JAPAN』と呼ばれて——本当にすごいことだと思いました」と友安社長は話す。
一度「作る」ことをやめた企業が、なぜ再び現場に戻り、世界的なデザイン賞を獲得するまでに成長できたのか。「日本のものづくりはすごい。でも、売り方が分かっていない。だからこそ『売る力』を持つ製造業が最強だと思っています」と友安社長は話す。
多角化経営の原点
現在、友安製作所では「EC事業」「カフェ事業」「工芸店事業」「メディア事業」「レンタルスペース事業」「まちづくり事業」の6つを主軸に事業を展開している。この多角化経営の原点には、会社の存続すら危ぶまれた時代があった。
高度経済成長期に金属製カーテンフックで業績を伸ばした同社だったが、安価なプラスチック製フックの台頭により需要は激減。友安社長が留学先から戻り、家業を継いだ当時、経営は限界状態だった。
現状を打破するべく、友安社長は新商品の開発を試みる。布を挟むだけでカーテンにできる、デザイン性にも優れたクリップ式カーテンフック「アートフック」だ。意気込んで従来の取引先である問屋へ売り込みに回ったが、そこで突きつけられたのは厳しい現実だった。
「『お袋さん(先代)が売っているフックがいくらか知ってる? 80銭だよ。1本80円もする高価なカーテンフックが売れるわけがないだろう』と言われました。従来の販売ルートに頼る道は閉ざされました」と友安社長は当時を振り返る。
「売れるもの」を探してECへ
自社商品が売れないのであれば、売れるものを探してくるしかない。友安社長は自身の英語力と、使われなくなった工場の空きスペースを活用し、海外からおしゃれなインテリア商品を輸入してEC事業をスタートさせた。
この事業転換により業績は回復。同社はWebデザイナーやエンジニア、動画クリエイターなどを採用し、コンテンツ制作や発信を通じて「売る力」を培っていった。



