EVシフトが生む雇用危機、内燃機関部品のサプライヤーは淘汰の波に直面
EVシフトが生む雇用危機、部品サプライヤー淘汰の波

電気自動車(EV)への急速なシフトが、自動車部品業界に深刻な雇用危機をもたらしている。内燃機関向け部品を主力とするサプライヤーは、需要減少により淘汰の波に直面しており、多くの企業が事業転換や雇用削減を余儀なくされている。

内燃機関部品の需要減少が加速

世界的な脱炭素化の流れを受け、各国政府はEV普及を推進している。欧州連合(EU)は2035年までにガソリン車とディーゼル車の新車販売を実質禁止する方針を打ち出し、日本政府も2035年までに新車販売を全て電動車両とする目標を掲げる。これにより、エンジンやトランスミッション、排気系部品など内燃機関に特化した部品メーカーは、中長期的に市場の縮小に直面している。

日本自動車部品工業会のデータによると、2020年時点で国内の自動車部品産業の雇用者数は約80万人。このうち、内燃機関関連の部品製造に従事する割合は約3割と推定されており、24万人規模の雇用がEVシフトの影響を直接受ける可能性がある。

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サプライヤー各社の対応と課題

大手部品メーカーは既に事業ポートフォリオの転換を進めている。デンソーは2025年までにエンジン関連部品の生産を縮小し、EV向けの電動化製品や熱管理システムに注力する方針を表明。同社の林新之助社長は「内燃機関部品の売上高は2030年までに半減する見込みであり、早期の構造改革が必要だ」と述べている。

一方、中小のサプライヤーは転換が容易ではない。ある金属加工メーカーの経営者は「EV向け部品の受注競争は激しく、技術面やコスト面で大手に劣る。既存の設備や人材を生かせる分野への転換を模索しているが、時間と資金が不足している」と打ち明ける。

雇用への影響と政府の支援

雇用面では、内燃機関からEVへの移行で必要とされる技能が変化する。エンジンの精密加工技術は不要になり、モーターやバッテリー、パワーエレクトロニクスに関する知識が求められる。経済産業省の試算では、2030年までに自動車部品産業で約10万人の雇用が減少する一方、EV関連で約5万人の新規雇用が創出される見込みだが、スキルのミスマッチが課題となる。

政府は2021年度補正予算で、自動車部品サプライヤーの事業転換を支援するための基金を創設。中小企業向けに技術開発や設備投資の補助金を提供しているが、申請手続きの煩雑さや採択率の低さが指摘されている。

業界再編と今後の展望

内燃機関部品の市場縮小は、業界再編を加速させている。2022年には、エンジンバルブメーカーのリケンが同業の日本ピストンリングを吸収合併。両社は内燃機関部品の需要減に対応し、電動車両向けの新製品開発で協業する方針だ。

また、海外の部品メーカーでは、独コンチネンタルが内燃機関部品部門を分社化し、EV関連事業に集中する動きが広がる。日本でも、今後さらなる統廃合や事業売却が進むとみられる。

専門家は、サプライヤーが生き残るためには、単なる部品供給からシステム提案型のビジネスモデルへの転換が必要だと指摘する。早稲田大学の林裕教授は「内燃機関に特化した技術を、EVの熱マネジメントや軽量化技術に応用するなど、既存の強みを生かした転換が求められる。政府の支援も重要だが、企業自身のスピード感ある対応が不可欠だ」と述べている。

EVシフトは避けられない流れであり、内燃機関部品サプライヤーは岐路に立たされている。雇用維持と産業競争力強化の両立が、日本の自動車産業の将来を左右する。

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