企業統治指針改訂、攻めの経営への転換を
企業統治指針改訂、攻めの経営への転換を

金融庁と東京証券取引所は、上場企業の行動原則を定める企業統治指針を5年ぶりに改訂した。成長に向けて積極的に資金を投じる攻めの経営へ転換する契機とすべきだ。

中長期の企業価値向上を重視

新たな指針は、旧来の株主還元など短期的な方策重視を改めて、中長期の企業価値向上に重点を置くよう求めたのが特徴だ。現預金などの資産を成長に有効活用できているかを、取締役会が不断に検証する必要性を指摘した。経営資源を、成長を目指す経営戦略と整合的な形で配分しているか点検することも要請した。いずれも妥当な方向だ。

ROE偏重の弊害

成長戦略の柱となる指針が策定されたのは2015年である。日本企業の経営効率が欧米に比べて劣るとの問題意識があった。指針策定後、経営効率化を図る指標として重視されたのが自己資本利益率(ROE)だった。分母に自己資本、分子に利益を置いて計算する。企業が集めた資金がどれだけ効率よく利益を生み出したかを示す目安として、8%の達成が強く推奨されてきた。

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効果は明確に表れたと評価できよう。収益力の向上で上場企業の決算の利益や株価は、歴史的な高水準が続いている。しかし一方で弊害が目立つようになってきたのも事実である。ROEは、企業が自社株を買い入れて消却し、分母の自己資本を減らせば比率を上げられる。このため、安易な自社株買いが蔓延する結果ともなった。現金をため込む旧弊も改まっていない。

成長投資ガイダンスも策定

新たな指針は、こうした問題を是正しようとするのが狙いだ。企業は指針を真摯に受け止め、経営改革を進めるべきだ。また、政府は企業統治指針の改訂に併せ、実務指針となる成長投資ガイダンスも策定した。

公共インフラを担う企業や公益性が高い業種については、資本効率ばかりを追い求めるのは難しいと指摘した。電力や放送、通信、鉄道などを念頭に置いている。他産業並みにROE8%を追求すると、インフラの更新が後回しになるなど、消費者の不利益になる恐れがある。料金規制などもあり、企業の裁量だけで経営効率を高められるわけでもない。

業界事情を踏まえた検討を

業界の個別事情を踏まえて、政府の規制と資本効率の求め方を検討していくのが望ましい。また自民党は、総務省に対し、放送事業者の資本政策のあるべき姿を検討するよう要請した。公的役割を持つ業種について議論を深めていく必要もあろう。

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