バローHD、介護事業で多角化の試金石 薬局併設の支援センター設置
バローHD、介護事業で多角化の試金石 薬局併設支援センター

ドラッグストア「V・drug 岡崎医療センター前店」(愛知県岡崎市)の調剤薬局の一角に、4畳ほどの小さな部屋がある。介護支援専門員(ケアマネジャー)の小田真美代さん(42)の仕事場だ。

介護認定を受けた80~90歳代を中心に約40人を担当し、介護サービスの利用計画を作り、関係機関に出す書類をそろえる。ここから車や自転車で高齢者宅を訪れ、家族らと支援の中身を話し合う日も多い。

「ドラッグストアがあるので口の中の手入れやリハビリに必要な商品も提案できる」と小田さんは話す。併設する調剤薬局から処方薬を届けることもある。

介護支援センター、愛知県で初設置

この部屋は、バローホールディングス(HD、岐阜県多治見市)傘下の中部薬品が1月、愛知県で初めて設けた「バロー介護支援センター」だ。中部薬品は昨年10月に介護事業部を発足させ、支援センターは岐阜県内の2か所を含めてこれで計3か所になった。3月には多治見市で高齢者が日帰りで通うデイサービスも始めた。

介護事業部の鈴木泰介次長(53)は「多治見市、岐阜市、岡崎市を結ぶ三角形の中で展開していく」と語る。

多角化の歴史と課題

バローHDは地場スーパーの買収に加え、事業の多角化で規模を広げてきた。1970年代にスポーツクラブ、80年代にホームセンターとドラッグストアの事業に参入した。

うまくいった事業ばかりではない。スポーツクラブ事業はコロナ禍などで会員が減り、21年3月期から25年3月期まで5年続けて営業赤字だった。田代正美会長(79)は「お客様の都合で商売をやらず、自分たちの都合でやっていた」と振り返る。

業界の再編も進む。田代氏は、ホームセンターは大手5社程度に集約され、ドラッグストアやスーパーでも企業の数が減るとみる。小池孝幸社長(54)も「バローは強いもの同士の中で何が違うのか。それは持っておかないといけない」と話す。

他社との提携と介護事業の展望

今夏にはホームセンター大手のコーナン商事(大阪市)と資本業務提携を結び、約30億円ずつを出資した。9月には大阪府豊中市のコーナン店舗2階にスーパーのバローを開いた。2階への出店は初めてだ。

小池氏は「空いた店舗を生かせば出店までの期間が短くできるし、出店コストも抑えられる」とし、コーナンとの提携にも既存の商業施設を生かして出店機会を広げる狙いがあると打ち明ける。

新たな介護事業は、複数の業種を抱える強みを生かせるかどうかの試金石となる。小池氏はバローHDの介護事業について「うちの資源が生きる分野」と位置づけている。ドラッグストアや調剤薬局だけでなく、住宅の修繕に役立つホームセンターや、健康づくりを支えるスポーツクラブの活用も視野に入れており、「行政も今のサービスを維持するのは難しくなってくる」と見通しを示す。

他社も動いている。スギHD(愛知県大府市)は26年2月期に売上高1兆円を達成し、在宅医療や介護支援に注力する。警備会社のALSOKや電機メーカーのパナソニックなども、本業と組み合わせて介護に参入している。

人手不足で介護事業が思うように進まない可能性もある。中京大経済学部の内田俊宏客員教授(58)は「多角化で企業が成長するには、地域に密着し、本業と親和性のある事業を広げていく戦略が求められる」と指摘する。

田代氏も「お年寄りが増える中で、今までと違った介護の形が出てくる」と話す。その形は、岡崎市の4畳の部屋から試され始めている。