スカイスクレイパー(福井県鯖江市)の社長もろさわ・りの氏は22歳。高校1年でアルバイトとして入社し、2024年に社長に就任した。現在はカレーハウスCoCo壱番屋などを31店舗展開し、2026年4月期の売上高は25億5700万円。だが、彼女の目標はもっと先にある。
年商1000億円、10事業、グループ20社
もろさわ社長が掲げるのは「10年で年商1000億円企業」「10事業への展開」「グループ20社の設立」。外食業界は原材料高騰や人手不足、離職率の高さ(2024年で25.1%)に悩むが、彼女は「絶対できます! 絶対やります!」と断言する。その自信の源は、現場の課題を置き去りにしない「現場主義」と、人を「育てる」のではなく「応援する」という独自のマネジメントだ。
「ニコ・キビ・ハキ」で全店舗を毎月訪問
同社には「ニコ・キビ・ハキ」というモットーがある。ニコニコ笑顔で、キビキビと機敏に、ハキハキとした表現や行動を実践する意味だ。もろさわ社長はそれを徹底するため、制服を着て全31店舗を毎月1回訪問する。「ピークの時間帯はこのシフト数だときつい。だったらもう少し増やしましょうなど、現場の実態を睨みながら改善を図っています」と語る。
もちろん、この方法はあくまで1店舗ごとの解決策であり、経営全体の視点では答えが異なる可能性もあると認める。「まだ、どうバランスを取ったら双方にとっていいかを考えられるレベルにはなっていないかもしれません。ただ、現場の問題や会社が抱える課題について、経営会議で話せるようになってきました」と振り返る。
「人を育てるのではなく応援する」
離職率の高い外食業界だが、もろさわ社長は採用面接から採用後のコミュニケーションにまで関わる。面接では「その人がどうなりたいかを聞き、『その姿を応援したい』と思った人を採用します。西尾会長(創業者)が言うのですが、人を育てるんじゃなくて応援するんです。そうなるとコミュニケーションを取る際にも『指示』ではなく『アドバイス』になり、言葉の意味が変わります。そういうマネジメントをとても大事にしています。1000億円企業になってもそれは失ってはいけないと考えています」と話す。
この「人を応援する」という考え方は、人手確保のヒントになりそうだ。
「やると決めたから」――逆算型の事業承継
もろさわ社長は1000億円目標の根拠を「やると決めたからです」と力強く語る。第一手として、ホールディングス化する計画だ。その上で逆算して事業計画を進める。「経営会議の時に、やり方を変えたり、目標を修正したりすることも可能です。私一人では行き届かない視点を、皆さんがカバーしてくれます。みんなで一丸となって動いています。ですから絶対できます! 絶対やります!」
2025年9月には病院向け給食会社ミールオンデマンドを買収。M&Aも視野に、業態を問わず積極的に事業を広げる考えだ。
「ビジョン逆算型」の後継者選び
もろさわ社長は20歳で社長就任の打診を受けた際、経営チームが発足した。メンバーは西尾会長、常務、6店舗を管理するエリアマネージャーなど5~6人。彼女は「まだ社長として成長が追いついていないところもありますが、『会社としてこういうことを見せていかなければいけない』と思うところは、ここ数年、発言できるようになりました」と語る。
2026年は西尾会長が経営面で伴走してくれる最終年。「社長業に本当の意味で身が入ってきた時に(会長の)退任か…という思いもありますが、最後だからこそ、今は貪欲に会長から学んでいます」とほほえむ。
西尾会長がもろさわ社長を選んだ際に意識したのは「誰に頼むか」(血縁や役職)ではなく、「どんな人にやってほしいか」(必要な資質)だった。「多くの方は『誰に継がせるか』という人物探しから考えがちです。ですが本当は、会社がどうなりたいかというビジョンから逆算し、それを実現するために『どんな人物像が必要か』をゼロベースで考えることが先なのです」と、ビジョン逆算型の事業承継の重要性を説く。



