英テクノロジー・コンサルティング企業ケンブリッジコンサルタンツのリチャード・トレハーン最高経営責任者(CEO)ら幹部は、読売新聞のインタビューに応じ、宇宙産業が未知のフロンティアから「日常の不可欠なインフラ」へと移行しているとの認識を示した。
打ち上げコストの低下や、AI、高度なセンシングといった技術融合により、地球観測や災害対応などが商業的に実現可能になっていると指摘。日本の強みである研究開発力を競争力がある商業サービスにつなげるには「より迅速に行動すべきだ」と強調した。
日本の宇宙産業の現状評価
日本の宇宙産業の現状についてトレハーンCEOは、「国家的なアジェンダとして高く掲げられ、政府の強い関心と国際協力に支えられている」と高く評価した。米国などが打ち上げ分野で先行していることに対しては、「打ち上げは宇宙エコシステムの一部にすぎない」と述べ、「日本は安全重視の産業システムや自動化、センシング技術など、既存の強みと一致する高付加価値な分野で競争力を築くことができる」と語った。
一方で、日本の宇宙関連企業が抱える課題として「日本の国内市場の枠を超えて考えること」を挙げた。日本法人の石毛洋一社長は、衛星データや通信装置を搭載して高度約20キロ・メートルの成層圏中を巡航する高高度プラットフォーム(HAPS)などの宇宙関連サービスは本質的にグローバル市場を対象としていると指摘した。その上で、「日本企業は最初から国際的なビジネスモデルを考慮する必要がある。研究開発だけでなく、事業開発やグローバル市場へのアクセスのためにもパートナーシップが不可欠だ」と力を込めた。
宇宙主権と国際協業の両立
国際協業における安全保障や「宇宙主権」の問題について、トレハーンCEOは、「主権とは自身の情報やレジリエンス(回復力)をコントロールできることだ」と定義し、「システム全体を適切に設計すれば、最終的なアプリケーションやソリューションのレベルで主権を設定でき、協業の妨げにはならない」と説明した。システムが巨大化・複雑化する中、一国や一企業で全てを開発することは不可能だとした上で、「重要なのはシステム設計だ。インフラや機能レベルで協力しつつ、最終的なアプリケーションや独自のセキュリティ層は主権ユーザーが管理・統制することができる」と説明した。
アジア地域ゼネラルマネージャーのマイルズ・アプトン氏は、「主権を超えて重要なのがレジリエンス(回復力)だ」と述べた。オーストラリアの山火事で地上の携帯電話網がダウンした例を挙げ、「衛星経由の通信でテキスト送信が可能になった。宇宙ベースのシステムがレジリエンスを支える重要なバックアップになる」と指摘した。
今後の日本での展開
同社は約60年にわたり最先端技術の開発を支援しており、日本でも10年以上の事業実績を持つ。今後の日本での展開について石毛社長は、「スタートアップだけでなく、日本の伝統的な大企業も宇宙を次のフロンティアとみなし始めており、今後5年間で力強い成長が見込まれる」と期待を示した。日本企業に向けて、トレハーンCEOは「日本は宇宙エコシステムにおいて非常に有利な位置につけている。宇宙は競争が激しくなっており、今はまさに、自信を持って投資や提携を進める時だ」と訴えた。



