バイオマスや太陽光ではない…世界が狙う次世代燃料「水素」の可能性と課題
世界が狙う次世代燃料「水素」の可能性と課題

世界の石油消費量を削減し、脱炭素社会を実現するための次世代燃料として、水素が大きな注目を集めている。現在、世界では1日あたり約1億バレルの石油が消費されており、パリ協定の排出目標達成には、2050年までにその3分の1に相当する量を削減しなければならない。そのためには、貿易や物流のネットワークを大胆に改革する必要がある。

バイオ燃料の限界とメタノールへの期待

1990年代には、メタノールが安価でCO2排出量も少ない代替燃料として注目され、道路輸送向けに研究が進められた。しかし、燃費効率がガソリンに劣り、腐食性が高いという欠点があった。それでも、2021年に世界最大の海運企業マースクは、カーボンニュートラルなメタノールで動くコンテナ船を12隻増やすと発表した。既存の船もメタノール対応に改造可能で、天然ガス由来のメタノールならCO2排出量を15%削減でき、再生可能エネルギー由来なら90%削減できる。

しかし、問題は供給量だ。2050年までに船舶燃料をすべてメタノールに置き換えるには、グリーンメタノールを年間5億トン以上生産する必要がある。これは現状の100倍以上の量であり、実現は容易ではない。また、アンモニアを海運向けクリーン燃料として開発するプロジェクトも複数あるが、課題は山積みだ。バイオ燃料も貴重な助けにはなるが、単独では問題を解決できない。

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水素は切り札になるか

水素は、燃焼時にCO2を排出しないため、次世代燃料の本命とされる。しかし、BBCのチーフ・エコノミクス・コレスポンデントであるダーシーニ・デイヴィッド氏は、水素には主に3つのタイプがあると指摘する。グレー水素(天然ガスから生成、CO2排出)、ブルー水素(グレー水素のCO2を回収・貯蔵)、グリーン水素(再生可能エネルギーで水を電気分解)だ。それぞれに課題がある。

エクソンモービルのダレン・ウッズCEOは、「水素は広く普及するレベルに達していない」と述べており、現時点ではコストやインフラの面で課題が大きい。それでも、多くの国々が水素を次世代燃料の中心に据えようと開発競争を繰り広げている。

3タイプの水素燃料それぞれの欠点

グレー水素は既存の天然ガスインフラを活用できるが、CO2排出量が多い。ブルー水素はCO2回収・貯留技術(CCS)が必要で、コストがかさむ上、完全なゼロエミッションではない。グリーン水素は最もクリーンだが、再生可能エネルギーの大規模な拡大と、電気分解の効率向上、低コスト化が不可欠だ。また、水素の貯蔵や輸送にも技術的ハードルがある。

デイヴィッド氏は、これらの課題を克服するには、政府の支援と民間企業の投資が不可欠だと強調する。特に、グリーン水素のコストを下げるための技術革新と、大規模な生産・供給インフラの整備が急務だ。

次世代燃料で「ゴールドラッシュ」は叶うか

各国は水素を中心とした次世代燃料の開発にしのぎを削っている。日本、ドイツ、オーストラリアなどは国家戦略として水素社会の実現を掲げ、大規模な実証実験やインフラ整備を進めている。しかし、デイヴィッド氏は「排出量を減らすだけで目標は達成できない」と警告する。消費パターンの根本的な変革や、省エネルギー技術の同時推進が必要だ。

水素燃料が真の「ゴールドラッシュ」となるかは、技術革新と政策の後押しにかかっている。現時点では、エクソンモービルのCEOが指摘するように、広く普及するにはまだ時間がかかる。しかし、脱炭素への強い意志と投資が、未来のエネルギー地図を塗り替える可能性を秘めている。

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