電気自動車(EV)への移行が加速する中、自動車部品業界で大規模な再編の波が押し寄せている。部品大手のデンソーが、最大で従業員の約4万人に相当する人員削減を検討する可能性があることが、複数の関係者の話で明らかになった。これは、EVの部品点数がガソリン車の約3分の1に減少するという構造変化に対応するための措置とみられる。
デンソー、4万人規模の人員削減を検討か
デンソーは世界で約17万人の従業員を抱えるが、そのうち約4万人が内燃機関関連の生産に従事している。EVシフトにより、エンジンや燃料噴射装置などの需要が急減することが見込まれ、これらの部門を中心に人員削減が避けられない情勢だ。同社はすでに、2030年までに内燃機関関連の事業規模を現在の半分以下に縮小する方針を示している。
部品点数減少がもたらす衝撃
ガソリン車には約3万点の部品が使われるが、EVでは約1万点に減少する。特にエンジンやトランスミッションなどの駆動系部品は不要となり、部品メーカーにとっては存続を脅かす打撃となる。デンソーだけでなく、アイシンや住友電工など他の大手部品メーカーも同様の課題に直面している。
業界団体の試算によると、日本の自動車部品産業の雇用は約100万人に上るが、EVシフトにより2030年までにそのうち最大3割が失われる可能性がある。これは、政府が掲げる「カーボンニュートラル」目標の達成と雇用維持のジレンマを浮き彫りにしている。
再編に動く部品メーカー各社
こうした状況を受け、部品メーカーは生き残りをかけて再編を加速している。デンソーは2023年に、グループ内でEV向け部品の生産を集約する方針を発表。また、アイシンはトヨタ自動車と共同でEV向け駆動モジュールの開発を進めている。
さらに、住友電工はワイヤーハーネスなどのEV向け製品に注力する一方、内燃機関向け事業の縮小を進める。ただし、これらの取り組みだけでは雇用吸収が追いつかず、大規模な人員削減は避けられないとの見方が強い。
政府の支援策にも限界
経済産業省は、自動車部品産業の構造転換を支援するため、補助金や税制優遇措置を用意している。しかし、業界関係者からは「支援の規模が不十分」との声が上がる。ある部品メーカーの幹部は、「政府の支援だけでは雇用を守り切れない。企業自身が事業ポートフォリオを大胆に転換する必要がある」と指摘する。
一方で、EVシフトの速度には不透明感もある。世界的にEV販売の伸びが鈍化しており、トヨタ自動車などはハイブリッド車(HV)にも注力する方針を示している。このため、部品メーカーはEV一辺倒ではなく、多様なパワートレインに対応できる体制を模索している。



