東海大学は7月28日、鹿児島県・種子島沖と静岡県・駿河湾での深海調査で採集した魚類が、日本初記録となる深海魚シダアンコウ科「Rhynchactis macrothrix」であると確認したと発表した。これまで国内では同属・同種の報告例がなかったため、Rhynchactis属に「シズクアンコウ属」、種名macrothrixに「シズクアンコウ」という標準和名を新たに提唱している。
採集されたのは、東海大学が所有する海洋調査研修船「望星丸」による2022年および2023年の深海調査の過程で、種子島沖と駿河湾からそれぞれ1個体ずつ。体長は種子島沖の個体が37.3mm、駿河湾の個体が43.6mmと報告されている。
深海性チョウチンアンコウの仲間
深海魚として知られるチョウチンアンコウ類は、水深数百mから2000m以深の太陽光がほぼ届かない深海域に生息する。生息域が極めて深く採集機会が限られるため、分布や分類の解明はあまり進んでいない。
一般的なチョウチンアンコウ類は、頭部から伸びる釣り竿のような器官「誘引突起」を発光させ、近づいてきた獲物を大きな口で飲み込む捕食方法で知られる。しかし、シズクアンコウが属するシダアンコウ科は発光器を持たない「光らない誘引突起」を持ち、獲物の誘引方法も一般的なチョウチンアンコウ類とは異なると考えられている。口は大きく開かず、歯も極めて小さく退化しており、小型のプランクトンや甲殻類を捕食していると推測されている。
日本近海での分布を初めて確認
シズクアンコウという和名は、同属のメスが持つ枝分かれする尾鰭条と、丸みを帯びた頭部から尾部に向かって細くなる体型が、樹木の枝先から滴り落ちる雨雫を連想させることに由来する。
今回の個体は、誘引突起の長さや先端の付属物の形態といった特徴から、海外で発見されていたRhynchactis macrothrixと同種と同定された。同種はこれまで大西洋、インド洋、台湾近海から採取されたわずか10個体のみが知られる極めて希少な深海魚で、今回の採集で日本近海における分布が世界で初めて明らかになった。
研究チームは、四方を深海に囲まれた日本近海の生物多様性の解明に向け、今回の日本初記録と標準和名の提唱は学術的に極めて重要な成果だとしている。なお、成果は「魚類学雑誌」に掲載された。



