前橋出身の彫刻家・村山琴泉が手がけた木彫「天狗像」が、設備更新工事を終え19日にリニューアルオープンする県立近代美術館で始まる「孤高の彫刻家 村山琴泉」展に出品される。琴泉が木彫に専念した明治末期の作品で、人物の内側から湧き上がるエネルギーを表現した到達点とされる。
牙彫の輝きから木彫への転換
江戸時代に根付やかんざしの装飾として精緻に彫られた象牙の工芸品は、明治になると繊細な置物彫刻として盛んに海外へ輸出されるようになった。村山琴泉が上京し、金田兼次郎に弟子入りした明治30年代は、牙彫がまだ輝きを失わず、西欧の彫塑の影響を受けて巨大化した時期にあたる。琴泉は師の勧めで展覧会に牙彫を出品して褒状を得るなど、めざましい活躍を見せた。
しかし、兵役を終えて故郷に戻った明治末、牙彫の輸出は急速に衰え、特に地方では高価な材料の入手も難しくなったことから、琴泉は木彫に専念するようになった。さまざまな注文に応え、人物像を中心に多くの彫刻を制作している。
気迫あふれる表現の到達点
「天狗像」は、面をつけて和太鼓を叩く伝統芸能の一場面を表したものとみられる。その気迫は、口を結び眉の吊り上がった天狗の顔だけでなく、勢いよく削った彫刻刀の跡からも感じ取ることができる。明治期に特徴的な超絶技巧を離れ、人物の内側から湧き上がるエネルギーを表現した琴泉芸術の一つの到達点といえる。
この作品は、設備更新工事を終え、19日にリニューアルオープンする県立近代美術館で始まる「孤高の彫刻家 村山琴泉」展に出品される。



