映像メディアの規格争いはほぼ終結した一方で、オーディオ分野ではCDを超える高音質を実現したハイレゾオーディオがアナログレコードの後継規格として生き残っている。IT・家電ジャーナリストの安蔵靖志氏は、著書『家電ビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)の中で、100年以上にわたるメディア戦争の歴史と、日本の家電メーカーが最終的に敗れた要因を分析している。
100年続くメディア戦争の歴史
音声や映像を記録するためのメディアは、その形状や記録形式によって容量や音質、画質が大きく異なる。このため、100年以上前から複数の規格が主導権を争う「メディア戦争」が繰り広げられてきた。日本の家電メーカーも、この戦いの一翼を担ってきた。
最近人気が復活しているアナログレコードも、1880年代には円筒形のフォノグラフと円盤形のグラモフォンが規格争いを繰り広げ、最終的にグラモフォンが勝利した。その後、アナログレコードの後継として登場したデジタルメディアである音楽CDは、ソニーとフィリップスの共同開発により規格争いは生じなかった。
SACDとDVDオーディオの争いとハイレゾへの継承
しかし、CDよりも高音質を目指した次世代CD規格では、SACD(スーパーオーディオCD)とDVDオーディオの二つの規格が激しく競合した。安蔵氏によれば、どちらも一般市場に広く普及するには至らなかったが、CDを超える高音質を実現した技術は「ハイレゾオーディオ」として現在も規格が活かされている。
「円盤形の物理メディア戦争はほぼ終結したように見えるものの、オーディオに関しては規格争いがデジタルメディアとして生き残っている」と安蔵氏は指摘する。
映像メディアの規格争い終結とスマートフォンの侵食
映像メディアの分野では、Blu-rayとHD DVDの争いを経て、Blu-rayが事実上の標準となった。しかし、ストリーミングサービスの台頭により、物理メディア全体の需要は減少傾向にある。さらに、スマートフォンの高性能化が録画・再生機器の市場を蚕食しており、家電メーカーは新たな価値提供を迫られている。
安蔵氏は、スマートフォンに取り込まれない機能として、クラウド連携やAI活用を挙げる。AIによる音声認識や翻訳能力の向上により、家電はより直感的な操作が可能になり、ユーザー体験が大きく変わると予測する。
AIが変える家電の未来
クラウドと連携しAIを活用する家電は、すでに多くの製品で実用化されている。例えば、音声アシスタントを搭載したスピーカーや、学習機能を持つエアコン・掃除機などがその代表だ。安蔵氏は「AIによる音声認識や翻訳能力の向上が、家電の使い勝手を根本から変える」と述べ、今後の進化に期待を寄せる。
日本の家電メーカーは、過去のメディア戦争で主導権を握れなかった教訓を活かし、AIやクラウド技術を核とした新たな競争に挑んでいる。物理メディアの時代は終わりを迎えつつあるが、デジタル技術を駆使した次世代の家電が、再び世界市場での存在感を示すことができるかが注目される。



