谷内江望氏が語る『アカデミアの泳ぎ方』研究の世界で生き抜く哲学
谷内江望氏が語る『アカデミアの泳ぎ方』研究の哲学

合成生物学の最前線を走る気鋭の研究者、ブリティッシュコロンビア大学教授の谷内江望氏が、研究の世界で生き抜くための哲学と実践をまとめた著書『アカデミアの泳ぎ方 研究の世界に生きるための哲学と実践』(羊土社、3630円)を上梓した。本書は、競争的資金の申請書や論文の書き方からジョブハンティング、人材獲得に至るまで、研究者としてのキャリア構築スキルを詳細に解説。一見ノウハウ本のようでありながら、研究哲学や組織内で自己実現するためのアイデアも豊富に盛り込まれている。

執筆のきっかけと科学界へのいら立ち

谷内江氏は執筆の動機について、「最初は自分の研究室のメンバーや距離の近い研究者仲間に向けて書こうと思った」と語る。忙しい中で断片的なアドバイスを伝えても素直に受け止めてもらえないことがあり、一度まとまった形で書きたいと考えたという。「本なら、知りたい人だけが手に取ってくれる」と、その利点も強調する。

もう一つの理由は、サイエンスの世界へのいら立ちだ。「自然の絶対的な真理に迫ろうと人間がもがくのが科学の営みのはずだが、科学者の中には、成功したい、注目される論文を出したい、偉くなりたいといった欲の強い人たちが多い」。本来、自然がつくった驚異の前で科学者は謙虚であるべきで、協力して誠実に前に進めるべきだと谷内江氏は指摘する。しかし現状はそれとはほど遠いという。

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手段が目的化する科学界の歪み

「本来手段であるべきものが目的になっている」と谷内江氏は警鐘を鳴らす。人より偉くならなくてもいいから、自分の足で立ち、協力して科学を進めるという風潮が薄まってきていると嘆く。一方で、同氏が尊敬する科学者たちは「みんな謙虚に、穏やかに笑っている人ばかりだ」と述べ、そうした姿勢を若者に伝えたいと語った。

谷内江氏は、うまくいっている人たちを観察して学んだことも多いという。個人の能力には限界があるため、良い関係を築けば必ず自分に返ってくるという信念を持ち、協力の重要性を説く。本書では、そうした観察から得た知恵を具体的なスキルとして読者に提供している。

本書の内容と読者へのメッセージ

『アカデミアの泳ぎ方』は264ページにわたって、研究生活の実践的なノウハウだけでなく、科学者としての心構えや哲学を丁寧に解説。競争的資金獲得のコツや論文執筆の技術、キャリア形成の戦略など、アカデミアで生き残るための総合的な指南書となっている。

谷内江氏は「個人の能力には限界がある。大きな仕事をするためには、周囲との協力や誠実な態度が不可欠だ」と強調。科学界の競争が激化する中で、本来の科学の営みを見失わないための指針を示している。

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