オートファジー「分解なくして合成はない」大隅良典氏が語る生命の原理と基礎研究の力
オートファジー「分解なくして合成はない」大隅氏が語る生命の原理

細胞内の成分を分解する「オートファジー」の仕組みの解明に道を開いた大隅良典・東京科学大栄誉教授が、2016年のノーベル生理学・医学賞受賞からまもなく10年となるのを前に、基礎研究への思いを語った。研究は今、病気や老化、健康長寿へと広がっているが、大隅氏が見つめてきたのは医療応用ではなく、生命が自分自身をどう作り替えているのかという根本の問いだという。

酵母の液胞から始まった発見

「もう10年たつのか、月日が流れるのは早いなというのが正直なところです。私はノーベル賞を目指して研究を進めてきたわけではなく、それまでの研究の流れの中で、ある日突然、そうなったという感覚です」と大隅氏は振り返る。

研究の原点は酵母の液胞だった。1974年に東京大で博士号を取得し、米ロックフェラー大で研究した後、東京大に戻った大隅氏は、理学部植物学教室で安楽泰宏教授から「何をやってもいい」と言われ、酵母の中にある液胞という小器官の役割を考えるようになった。当時、液胞は細胞内の「ごみため」のように見られ、多くの人が注目する対象ではなかったが、「皆が寄ってたかってやっていることより、違うことから生命を見たいという思いを持っていました」と話す。

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「目で見えた」ことが突破口に

大隅氏の研究は、「目で見えた」ことが突破口になったという。顕微鏡で観察することで、液胞の中での分解の過程を直接確認できたことが、その後の発見につながった。

大隅氏は「分解なくして合成はない」という言葉で、生命が自分自身を作り替える仕組みの重要性を強調する。オートファジーは、細胞内の不要な成分を分解し、新しい成分を作り出すための基盤となる営みだ。この仕組みの解明は、病気や老化の理解にもつながると期待されている。

基礎研究の力と次の時代へ

10月5日から始まる2026年ノーベル賞の発表を前に、大隅氏は基礎研究の重要性を改めて訴える。医療応用という出口ではなく、生命の根本的な原理を探求することの意義が、オートファジー研究の歩みを通じて示されている。

小さな酵母の液胞から始まった発見は、生命科学の広い領域に影響を与え、次の時代の研究に大きな問いを残している。大隅氏の言葉は、基礎研究がもたらす可能性の大きさを物語っている。

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