キウイの健康価値とNZの豊かさ、EU認証取得の背景を現地取材で解明
キウイの健康価値とNZの豊かさ、EU認証の背景を現地取材で解明

キウイフルーツは、なぜこれほどまでに「健康的な果物」と称されるのか。その背景には、科学的な研究だけでなく、健康を暮らしの中で自然に実践するニュージーランドという国の姿があった。

連載の最終回となる今回は、ニュージーランド現地を訪ね、キウイフルーツの健康価値を改めて見つめ直すとともに、その背景にあるニュージーランドという国の“豊かさ”に目を向ける。

多彩な栄養素を含むマジックフルーツの秘密

キウイフルーツは、世の中に存在する果物の中でも栄養密度が最も高いものの一つだ。グリーンキウイには食物繊維やアクチニジンというたんぱく質分解酵素が含まれ、アクチニジンはキウイ特有の消化酵素である。ゼスプリのサンゴールドキウイは1日1個で1日分のビタミンCを摂取でき、ビタミンEも豊富。ルビーレッドはビタミンCに加えてアントシアニン、ポリフェノールも摂取できる。さらに葉酸やカリウムも豊富に含む。

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ある調査では、「栄養素充足率」はイチゴが9.2、バナナが8.0だったのに対し、グリーンキウイは12.3、サンゴールドキウイは15.7、ルビーレッドは17.6と大きく上回った。

EUで健康価値をうたえる科学的根拠

ニュージーランド・オタゴ大学(クライストチャーチ校)医学部で消化器系を専門とするリチャード・ギアリー教授は、グリーンキウイの摂取が排便回数を増やし、正常な腸の働きに寄与するという研究で、2025年8月にEU(欧州連合)のヘルスクレーム認証を取得した。ヘルスクレームとは、健康価値を前提とした機能性表示のことだ。

EUヘルスクレームは欧州食品安全機関(EFSA)が認証するもので、人間を対象とした複数の臨床試験の質・量ともに深い科学的根拠が必要とされる。実は、EUヘルスクレームを取得した生鮮フルーツはグリーンキウイが初めてだった。

ギアリー教授は、「ニュージーランド人はキウイフルーツは健康にいい、おなかにいいと言われて育ちましたが、その慣習だけでは(ヘルスクレームは)承認されません」と語る。今回の申請では、先行研究に自身の最新研究も加えた6つの臨床試験のデータをEFSAに提示した。

臨床試験で示された腸の健康への効果

2002年の先行研究では、2つの年齢グループで便通の改善効果が確認され、1週間の排便回数・頻度が増加。2018年の研究では、大腸に残った便が軟らかくなり、便通の質が向上。2020年の研究では、キウイ摂取で便通がよくなる一方、不快感が増えるといった逆効果がないことを示した。

2021年の研究では、グリーンキウイ1日2個が、便秘への効果が実証済みの健康食品やプルーンと同等の便秘軽減効果を示した。さらにギアリー教授が2022年に日本の東北大学の福土審教授、イタリア・ボローニャ大学のジョヴァンニ・バルバラ教授とともに行った臨床試験では、3カ国から計184人(健康な成人、便秘を抱える人、過敏性腸症候群で便秘を抱える人が各約3分の1)が1日2個のグリーンキウイを摂取した。

その結果、便秘症状を持つ人全員に改善が見られ、実証済みの健康食品と同等かよりよい効果が得られた。腹部不快感や下痢を起こした人はいなかった。「1日2個のグリーンキウイ摂取は、便秘だけでなく腹部の不快感も改善することがわかりました。かつ、キウイの効果はきわめて早く出ることもわかったのです」とギアリー教授は話す。

これらのエビデンスに基づき、「1日あたり新鮮なグリーンキウイ2個(果肉200グラム以上)摂取」を条件に、EU全加盟国で「グリーンキウイの摂取は、排便回数を増やすことで、正常な腸の働きに寄与します」という文言で販売できるようになった。

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血糖値の上昇を抑えるキウイの食物繊維

ニュージーランド・バイオエコノミー科学研究所の主任研究員であるジョン・モンロー博士は、キウイの食物繊維の腸機能における働きを研究している。モンロー博士によると、自然由来の食物繊維は未加工のため、腸内で大きく膨らむ。キウイに豊富な食物繊維は、体内で他の食べ物を包み込むように消化を助け、ブドウ糖などの粒子の拡散速度を下げ、血糖値の上昇を抑える。

「1個の生のキウイの食物繊維は、おなかの中で何倍もの大きさに膨らみます。それが摂取された他の食べ物を包むようにして、消化を助けます。併せて消化器官内にあるブドウ糖などの粒子の拡散速度を下げ、それにより消化速度が低下して、結果的に血糖値の上昇を抑えます」とモンロー博士は説明する。

また、キウイの有機酸と食物繊維が一緒に作用することで血糖反応を抑制するという。さらに、食事の際にキウイを食べる順番も重要で、「小麦のビスケットを食べる30分前にキウイを食べると、血糖反応が抑制されました」と述べ、キウイはできれば食事の最初、炭水化物の主食を食べる前に摂取すると効果的だとしている。

加えて、キウイの食物繊維は消化されないため、腸内に長くとどまり発酵を促すほか、水分を多く含むことで便のかさが増す効果も見られる。「発酵性のあるキウイの食物繊維は、大腸がんの予防にも貢献します」とモンロー博士は指摘する。

人々の生活に染み込んだニュージーランドなりの豊かさ

ニュージーランドのスーパーマーケット「ニュー・ワールド」では、食品に健康面を5段階で示す「HEALTH STAR RATING」が表示され、消費者が購入を判断する材料となっていた。星5つから1つまであり、星1つの商品も見かけた。また、リターナブル容器で惣菜を販売する「RePlay」や、ボディソープなどをリフィルで購入できるサービス、食品を20NZドルで購入して寄付する「Family 2 Family」の取り組みも行われていた。

こうした取り組みはスーパーだけでなく、日常生活にも浸透している。オークランド郊外のサリス家での夕食では、キウイを使った料理やデザートが提供され、キウイ果樹園のカーナカンさんの家でもキウイを料理にあしらったり、乾燥チップスにして食べるという話を聞いた。

ニュージーランドの豊かさを言葉にするのは難しいが、健康と自然環境と社会の良心を日常生活の中で当たり前のように追求する生活スタイルに、ニュージーランドなりの豊かさを感じた。そしてその中心にキウイフルーツがある。関わる人すべてが健康や美味しさという価値の追求を続け、いまや国の象徴とさえいえる果実に育った。その価値は海を越えて日本でも多くの人に注目され、愛されている。