亡くなったのは6歳の女児で、CHD3という遺伝子の変異によって発達の遅れなどが現れる「スナイデル・ブロック・カンポー症候群」と診断されていた。非常にめずらしく、患者数は世界で250人ほどという。
米科学誌サイエンスのウェブサイトには7月27日付で、今回の記事の中国語版が掲載されていた。安全性が十分に確認されないまま、中国・上海交通大学の病院で遺伝子治療が実施され、女児が死亡したことをサイエンスなどが報じた。中国では米報道を受けて調査が始まった。
仇子龍研究員らは、女児のCHD3遺伝子を「ゲノム編集」という方法で1文字だけ書き換え、正常に機能できるようにすることをねらった治療法を開発していた。
ウイルスの性質を利用した治療
遺伝子を書き換える成分を脳に届けるためには、ウイルスの性質を利用する。近年、遺伝子治療薬という新しいタイプの薬が登場している。「アデノ随伴ウイルス(AAV)」の性質を使って、機能が失われている遺伝子を細胞内に届けることができる。
今回は、遺伝子を補うのではなく、患者自身の遺伝子を書き換える「ゲノム編集治療」を目的としていた。AAVを利用して、書き換えるための「道具」を導入することになるため、従来の遺伝子治療薬とは大きく異なる。
投与から1週間で死亡
今回の研究では、その候補薬を患者の髄液に注射したが、投与から1週間後に女児は亡くなった。仇氏らはこの方法の安全性について、サルで検証する実験を実施。投与した4頭すべてで、中程度~重い肝臓のダメージが報告されていたと報道されている。
研究チームは女児の死亡を伏せて論文を発表しており、研究倫理に関して複数の問題点があると指摘されている。「意図的に隠したなら大変な問題」だとされている。



