マウスの体内で、別の動物であるラットの細胞からなる腎臓を作り出すことに成功したと、国立長寿医療研究センター研究所などの研究チームが20日までに国際学術誌で発表した。この成果は、将来的にヒトの移植用臓器を動物の体内で作る技術の基盤となる可能性がある。
ES細胞注入による臓器作製の仕組み
研究チームは、さまざまな細胞に分化できる「胚性幹細胞(ES細胞)」を、胚の段階で注入する方法を採用。腎臓の形成に不可欠な遺伝子が欠損したマウスの胚を複数種類用意し、そのうちの一つで、遺伝子「Osr1」を欠くマウスの胚では、腎臓のネフロン前駆細胞と尿管芽という細胞が作られない。しかし、そこにラットのES細胞を注入すると、ラットの細胞がこれらの重要な部位を補い、腎臓を持つ胎児が誕生した。
異種間臓器移植研究の現状
ヒトへの臓器提供者不足を解消する方法として、現在は拒絶反応を抑える遺伝子改変を施したブタの臓器を使う研究が注目されている。一方、チームによれば、ある動物の臓器を異なる動物種の体内で作る「異種間臓器作製」の研究も進展中だ。これまでにマウス体内でラットの膵臓や胸腺を作った例はあったが、腎臓は形成過程が複雑で成功報告がなかった。今回の成果はその空白を埋めるものだ。
今後の展望と課題
研究チームは「基礎研究の段階だが、今回の手法を応用すれば、ヒトの臓器をブタなどの大型動物で作る技術開発につながる可能性がある」とコメントしている。ただし、実際の移植医療に応用するには、臓器の機能や安全性の確認、倫理的な課題の検討など、多くのステップが必要とされる。



