静岡市中心部の静岡浅間神社の参道にある「おがわ」は、「静岡おでん」と呼び始めた老舗だ。黒いスープと串に刺したおでん種に、だし粉と青のりをかけて食べる独特のおでんは、地元の人たちの心の味として親しまれている。
創業以来受け継ぐ先代の味
おでん種は17種類。だし汁は創業以来、ずっと継ぎ足して使っているという。人気の種(100円〜)は黒はんぺん、牛すじ、糸こんで、筆者はじゃがいもがお気に入りと紹介されている。いずれもまろやかな味わいが広がる。
その秘訣について、3代目の小川光枝さん(75)は「牛すじのスープにおしょうゆを足すだけ。砂糖もみりんも一切使わない。『練り物が良ければおいしいだしが出る』との先代の味を守り続けているだけです」と話す。練り物の仕入れ先も、1948年の創業当時と同じだ。
駄菓子屋系おでん店の日常
市内では屋台から発展したおでん街も有名だが、ここはいわゆる「駄菓子屋系」。朝10時に店を開け、昼間から親子3代で通い詰める常連や遠来客でにぎわう。通年でかき氷(500円〜)も出しており、「カンロ」味のかき氷は素朴な甘さが特徴だ。
バブル景気で世の中が浮かれていた80年代は「おでんなんて……」と客足が遠のいた時期もあった。それでも先代の「地味にコツコツやっていれば絶対にいいことがある」との教えを守った。2000年代にB級グルメブームが起こり、気づけば名店になっていた。
支えられる縁と看板犬
県内外に応援団がいて、手弁当で店のホームページを作ってくれたり、イベントを手伝ってくれたりする。「おでんは温かいものだから、お客さんも人間味あふれるんですね」。光枝さんの長女で、店に立つ中津川真生子さん(53)は、不思議な縁に感謝する。
昭和で時が止まったような店は居心地がよく、看板犬のココちゃんが出迎えてくれることもある。「初めての感じがしない」。そんな初訪問客も多いという。