スーパーの店頭に旬の栗が並ぶ季節。栗ご飯や渋皮煮を作ってみたいと思いながらも、皮むきの手間を理由に手が伸びない人も多いのではないでしょうか。実は、栗は下処理を工夫するだけで調理の手間を減らせ、保存の仕方によっては甘みが増すこともあるといいます。家庭でできる栗の下処理のコツや保存法について、全国各地で料理教室を開講している一般財団法人「ベターホーム協会」(東京都渋谷区)に話を聞きました。
発言小町に寄せられた栗の知恵
読売新聞のユーザー投稿サイト「発言小町」には、「生栗、どうやって食べます?」というタイトルの投稿が寄せられています。東京都在住のトピ主「ぽろたんたん」さんは毎年、栗の一大産地として知られる茨城県笠間市の道の駅で生栗を購入。その道の駅では5キロ、10キロ単位で大量購入する人をよく見かけるため、どうやって食べているのか疑問に思い、発言小町で栗の使いみちを尋ねました。
この投稿には、「栗ご飯もたまにしますが、皮むきが面倒なので、ゆでて半分に切ってスプーンで食べています」「渋皮煮を作りましたが、皮をむくのがつらくて……」といったコメントが寄せられました。一方で、「購入したら2日くらい冷蔵庫のチルド室に保管してから調理してみてください」「生栗は殻付きのまま冷凍しています」「圧力鍋でゆでると渋皮がはがれやすい」など、下処理や保存に関するアドバイスも集まりました。
栗は鮮度が命、冷蔵か冷凍で保存
ベターホーム協会の講師・増島仁美さんは「栗は鮮度が命です。傷みやすいので常温に置いておくことは避けましょう。使いきれないときは、冷蔵か冷凍で保存を」と話します。皮付きのままで冷凍しておけば、時間に余裕のあるときに皮をむくこともできるそうです。
増島さんによると、栗は木から落ちた状態で収穫するため、地表の汚れなどが付いており、下処理が大切です。スーパーで購入したものは処理済みのものが多いですが、自分で拾った栗や、もらい受けた栗はすぐに下処理を行います。皮に穴が開いているなど、見た目に傷んでいるものをまず取り除き、大きめのボウルなどで水につけると、中身が少なかったりするものが浮いてくるので取り除きます。選別が終わったら、流水できれいに洗い、水気をしっかり拭き取ります。
栗に含まれるデンプンは、低温で保存することで糖化(砂糖の主成分であるショ糖に変化する現象)が進み、甘みが増す特徴があると言われています。冷蔵保存する場合は、新聞紙に包んで冷蔵庫のチルド室に入れます。保存袋に入れるのであれば、密閉せず、袋の口を折りたたむ程度にします。保存期間は2〜3日、最大でも1週間が目安です。冷凍保存する場合には、保存袋に入れ、空気を抜いて密閉し、冷凍庫に保存します。冷蔵庫のドア開閉の頻度を考慮して、約1か月を目安に使い切るのがおすすめです。
熱湯で軟らかくしてむくコツ
栗の皮をむくときのコツも教えてもらいました。冷蔵保存した栗の皮をむく場合にはまず、ボウルに入れた熱湯に栗を20〜30分浸しておきます。こうすることで、外側の硬い「鬼皮」も内側の「渋皮」も軟らかくなります。
次に、包丁を使って皮をむきます。同協会では、安全性を重視して、次の手順を教えています。
- まな板の上に栗の平らな面を下にして置き、安定させます。
- 底にあるザラザラした部分(座)を包丁で薄く切り落とします。
- 切り口を引っかかりにして、包丁の刃を使って先端に向かって鬼皮を引っ掛けるようにむいていきます。むいたものから湯につけておくと、渋皮がふやけて、むきやすくなります。
- 鬼皮をむき終わったら、渋皮をむきます。一気にむこうとせず、包丁の刃元を使ってゆっくり削るように皮をはぎ取っていきます。包丁使いが不安な場合には、まな板に栗を置いたまま削ると安全です。
むき終わった栗は、水につけてアク抜きをすると、きれいな色を保つことができます。なお、冷凍した栗の皮をむく場合は、中まで解凍せず、半解凍状態でむきます。完全に解凍してしまうと、うまみ成分が抜け出てしまうため、避けたほうがよいです。
絶品「栗ご飯」を炊くプロの裏技
秋になると食べたくなる栗料理の筆頭格と言えば、栗ご飯。「ベターホームのお料理教室」でも毎年10月には、栗ご飯の作り方を教えていますが、その日の教室は毎回、たくさんの生徒で盛況になるのだそう。「栗ご飯を炊くときは、うるち米ともち米を3対1の割合で混ぜると、もっちりと仕上がり、翌日になっても硬くなりにくいです」と増島さんは話します。
うるち米にもち米を混ぜて洗い、約1時間、水に浸します。塩やお酒などの調味料は吸水を妨げるため、炊く直前に入れること。栗はお米と混ぜ込まず、お米の上にのせて炊きます。そうすることで、炊きムラを防ぐことができます。
「栗は、鶏肉の甘煮や、韓国風の煮込みにもよく合います。また、ジャガイモやサツマイモと同じ感覚で、ポタージュやコロッケなどにも使えます。栗のビタミンCはデンプン質で覆われているため、加熱してもビタミンCが壊れにくいという魅力もあります」と増島さん。皮をむいた栗を冷凍しておけば、少量使いたいときにも便利です。冷凍した栗を使うときは、解凍せずにそのまま調理するのが基本です。水分とともにうまみが逃げるためです。ただし、調理時間の短い炒め物では、凍った栗の中まで火が通らないことがあるので、あらかじめ解凍してから炒め物に合わせると良いそうです。
教わった通りに自宅で栗ご飯を作ってみました。一晩冷凍した皮付きの栗に熱湯を注いでから包丁で皮をむきました。熱湯によって鬼皮が軟らかくなり、不思議なくらいするするとむけていきます。渋皮をむくのにはちょっと苦戦しましたが、まな板の上でゆっくり削るようにして、はぎ取ってみました。これまで、市販の栗ご飯の素を混ぜて炊くだけだった記者にとっては、とても新鮮な体験でした。出来上がった栗ご飯は、本来の香り豊かな栗がゴロゴロとぜいたくに入っていて、最高の食感を楽しめました。店頭で栗を見かけたら、また買い置きしよう。(読売新聞メディア局 永原香代子)