11月3日に実施される米中間選挙を来月に控え、第2次トランプ政権下の米芸能界では「言論の自由が脅かされている」という危機感が広がっている。俳優や歌手らによる政治的な発信は米国では珍しくないが、第1次政権時と比べ、その姿勢に変化が生じているという。
クルーニーさんらが政権批判、支持派の芸能人も
AFP通信によると、俳優のジョージ・クルーニーさんは9月、ベネチア国際映画祭の生涯功労金獅子賞受賞に先立つ会見で、米国を「最も不適任な人々に統治されている国」と呼び、トランプ政権を批判した。11月の中間選挙が「チェック・アンド・バランス(抑制と均衡)」として機能する可能性があるとし、「運が良ければ(次期米大統領選がある)28年には、ある程度正常さを取り戻せるだろう」と述べたという。
ロック歌手のブルース・スプリングスティーンさんは1月、ミネソタ州で移民当局によって撃たれ死亡した市民2人を題材にした曲「ストリーツ・オブ・ミネアポリス」を発表。3月に全米各地であった、トランプ氏とその政策に反対する大規模な抗議デモ「ノー・キングス(王はいらない)」には、俳優のロバート・デニーロさんらが参加した。
一方で、トランプ氏を支持する芸能関係者もいる。トランプ氏は昨年1月、俳優のメル・ギブソンさんとシルベスター・スタローンさん、ジョン・ボイトさんの3人を「ハリウッド特別大使」に起用すると発表。エンタメ産業が「外国に奪われている」と主張し、3人からのアドバイスを受けて「ハリウッドの黄金時代」をつくるとぶち上げた。
第1次政権下で活発化した芸能人の政治発言
ロサンゼルス在住の映画ジャーナリスト・猿渡由紀さんによると、米国では「著名人が政治や社会的な問題について発言し、行動するのは、立派な行為だと広く認められている」という。近年特に芸能界で政治的発言が盛んになったのは第1次トランプ政権(17~21年)の頃で、分断をあおるような政権に一丸となって対抗する雰囲気があった。
17年1月のゴールデングローブ賞授賞式では、俳優のメリル・ストリープさんがトランプ氏を批判。歌手のマドンナさんも同月、トランプ氏に抗議する「女性大行進」に飛び入り参加し、「私は怒っている。ホワイトハウスの爆破も考えた」などと演説した。翌2月の第89回アカデミー賞授賞式では、司会のコメディアン、ジミー・キンメルさんがトランプ氏に対する風刺満載のスピーチを披露した。
第1次政権下でとりわけ注目を集めたのは、18年の中間選挙で自身のSNSのインスタグラムで民主党候補への支持を表明した歌手のテイラー・スウィフトさんだ。猿渡さんは「政治的発言をするリスクはもちろんあるので、スウィフトさんもだいぶ考えたと思う。彼女はずっと前から人気者で、発言の影響は大きかった」と振り返る。
第2次政権で「おとなしくなった」ハリウッド
第2次トランプ政権になってから、クルーニーさんやデニーロさんら批判を続ける俳優らもいるものの、「ハリウッドは第1次政権下と比べおとなしくなっている」と猿渡さんは指摘する。「芸能界全体として政治的発言に対する圧力が強まっている」という。