「だからさ」
昇がおかみさんに言う。「そんなことを言っている段階じゃないんだ。今手を打たないと、店が潰れてしまうんだ」
「そうかね。これまでもってきたんだから、この先も何とかやれるんじゃないかね」
「高度成長やバブルの時代とは違うんだ」
「なら、潰れりゃいいさ」
「え……?」
「やりたいようにやって、それでもたないってのなら、潰れりゃいいって言ってるんだよ」
「だから、それを俺が改革するって話なんじゃないか」
「この店はね、まだ社長のものなんだよ」
「そんなことはわかってる」
「ふん。わかってりゃいいさ」
「ひとまず騒ぎは治まったようですね」
阿岐本が言った。「では、私らはこれで失礼することにしますよ」
夫婦の対立
昇は店の存続を懸念し、即座に対策を講じなければ倒産すると主張する。しかしおかみさんは、これまでの経験を踏まえて楽観的な見方を示し、高度成長期やバブル期とは環境が異なるという昇の指摘に理解を示さない。
おかみさんの立場
おかみさんは、昇が思い通りに経営して失敗するなら店が潰れても仕方ないと述べ、店の所有権が依然として社長にあることを指摘する。昇はその点を認識していると応じるが、おかみさんは納得した様子を見せない。
阿岐本の判断
その様子を見た阿岐本は、ひとまず騒動が収まったと判断し、自分たちが退席する意向を伝える。夫婦の対話はまだ続きそうだが、その場はひとまず落ち着きを見せている。