京の夏を告げる祇園祭の前祭(さきまつり)山鉾(やまほこ)巡行が17日、京都市内で行われた。華やかな懸装(けそう)品で飾られた山と鉾計23基が、35度を超える猛暑日となった都大路を悠然と進んだ。京都府警の調べでは、沿道には約19万人の見物客が詰めかけ、歓声や拍手が響いた。
猛暑の中、早朝から熱気
先頭の長刀(なぎなた)鉾が四条烏丸を出発した午前9時頃には、すでに気温は30度を超えていた。くじで巡行順を決めた山鉾の中から「山一番」を引き当てた郭巨(かっきょ)山などが続き、四条通を東へ進んだ。四条河原町や河原町御池では、山鉾が迫力満点の「辻(つじ)回し」を披露。車輪の下に割り竹を敷いて水をまき、各鉾ごとに異なる「よいとせー」の掛け声を合図に、豪快な音を立てて90度回転させた。舁山(かきやま)の白楽天山は、舁(か)き手が山を持ち上げ、「よいしょ」と威勢よく3回以上回した。23基はその後、御池通を西進し、新町通で大きなトラブルなく巡行を終えた。
初めて訪れた外国人も感動
米ノースカロライナ州から初めて祇園祭に訪れたというエリック・ギボンズさん(59)は「とても暑いが、千年以上続くこの美しい祭りに実際に立ち会えてうれしい」と沿道で巡行の写真を撮影していた。
稚児の注連縄切り、祖父も見守る
長刀鉾の稚児を務めた長谷航太郎君(8)は、四条通に張られた注連縄(しめなわ)を太刀で堂々と断ち切り、巡行の始まりを告げた。猛暑の中、着物姿で大役を果たした長谷君は「ちょっと緊張した。注連縄切りはワクワクして、楽しかった」と話した。69年前に同鉾の稚児を務めた祖父・幹雄さん(78)は長谷君の脇に乗り込み、間近で晴れ姿を見守り、「立派立派。ようやったと思う」と孫をねぎらい、「(鉾の上から)素晴らしい光景が見られた」と感慨深く語った。
「山一番」の正使、大役を無事終える
四条堺町で行われた「くじ改め」では、郭巨山の正使を務めた平岡昌高さん(80)が、くじの入った文箱の封を解き、奉行役の松井孝治・京都市長に示した。平岡さんは今年度で30年以上務めてきた代表理事を勇退する。2月に右膝を手術し、リハビリを続けてきたが痛みはまだ残っており、正使を務められるか最後まで悩んだが、息子らに背中を押されて決意した。大役を終えた平岡さんは「昨夜は所作の練習をし、ゆっくりと一つ一つ決めることを心がけた。無事終えられてほっとしている」と振り返り、「歩きながら景色を見ていると、これまでの思い出があふれてきた。山一番も引き当てられ、今年は最高の祇園祭になった」と笑顔で汗を拭った。
約250年ぶりに見送り新調
背面を飾る懸装品「見送(みおくり)」を約250年ぶりに新調した伯牙(はくが)山は、金糸の刺繍(ししゅう)を日差しに輝かせながら巡行に華を添えた。元の見送りは江戸中期の作とされ、5人の仙人や虎、牡丹(ぼたん)が描かれている。劣化が進んだため、国の補助金を活用して元の図柄通りの新調を決定。織物会社「龍村美術織物」が3年かけて製作した。保存会の松本直也常務理事(50)は「実際に取り付けてみて、素晴らしいと実感した。見てくれた方に『立派なものが出来た』と言われ、誇らしい」と話した。
猛暑対策、各山鉾町で工夫
この日の京都市内は今夏最高の38.0度を記録する猛暑日となり、各山鉾町は対策を講じた。木賊(とくさ)山は、クリーム色の生地に緑色で山の名を入れた晴雨兼用傘を初導入し、裃(かみしも)姿の関係者らが差して歩んだ。保存会の池田新一代表理事(70)は「かなり効果があった。来年以降も活用したい」と話した。また、綾傘(あやかさ)鉾や船鉾では、こまめに水分補給ができるよう、カバーをつけた飲料入りのペットボトルを下げて進んだ。長刀鉾では必要に応じて冷却スプレーを用い、体を冷やした。
神幸祭も始まる
八坂神社では夕方、祭神を乗せた3基の神輿(みこし)が氏子地域を巡る「神幸祭(しんこうさい)」が始まった。中御座、東御座、西御座の3基が西楼門の石段下に集結。出発式では野村明義宮司が激励し、白い法被姿の担ぎ手が「ホイット、ホイット」と威勢のよい掛け声を上げながら神輿を高く掲げた。その後、順々に御旅所がある四条寺町を目指して練り歩いた。御旅所に安置された神輿は、後祭(あとまつり)の山鉾巡行がある24日の「還幸祭(かんこうさい)」で神社に戻る。



