三重県御浜町で石材店を経営する湊賢一郎さん(50)と映像作家の西村司さん(47)が、旧入鹿村(三重県熊野市紀和町)にある英国兵墓地の映像を制作して公開した。墓地には太平洋戦争中に捕虜として連行され、母国から離れた見知らぬ土地で亡くなった英国兵16人が埋葬されており、2人は「住民が墓を守ってきたことを伝えたい」と話す。
住民が守り続けた墓地
1944年6月、マレー半島で英国兵300人が旧日本軍の捕虜となり、労働力として旧入鹿村の鉱山に連行され、終戦までに16人が病気などで亡くなった。墓地は収容所だった場所に造られ、十字架の墓標がある。石碑には亡くなった兵士の名が刻まれている。
墓地は終戦後、地域の老人会が定期的に清掃をするなどして守り続けてきた。1992年、元英国兵らが墓参りに訪れたことをきっかけに始まった住民との交流も続く。活動に長年関わった同県紀宝町の戸地功さん(79)らによると、英国の戦没者追悼式(11月11日)に合わせ、毎年11月初旬に追悼式を行ってきたが、メンバーの高齢化で活動は縮小しているという。
映像制作の経緯
湊さんは日頃、墓に関わる仕事をしており、戸地さんとは同じ高校の卒業生という縁で数年前に知り合った。地域住民が今も供養を続けていることに心を動かされ、昨年7月、「映像に残したい」と旧知の西村さんに相談した。
2020年に東京から移住してきた西村さんは「地方では知らないうちになくなっていく文化が多い。墓地を後世に引き継ぐことでお墓参りをしてくれる人を増やせたら」と賛同。共同で制作することになった。
映像に込めた思い
完成した映像は約17分。昨年11月の追悼式の様子や収容所の写真などを収録した。関係者へのインタビューで戸地さんは長年の活動を振り返った上で「清掃を続けてくれたお年寄りがいなくなった。何とかせなあかん」と指摘。更家さんは、身ぶり手ぶりで英国兵とコミュニケーションを取った思い出に触れ「戦争は絶対いけない。教訓として墓地を残したい」と語った。
捕虜は日本にとっては負の歴史でもあり、墓地のことを詳しく知らない地元住民も多い。湊さんと西村さんは「戦争の爪痕があったことを伝える貴重な場所。英国人を含め、多くの人に知ってほしい」と話し、今後は英語の字幕を加えることも検討している。



