緩和ケアの僧侶が「よくいきちゃん」考案、患者にカード配布
緩和ケアの僧侶が「よくいきちゃん」考案、患者に配布

公認心理師として緩和ケア医療に携わる僧侶の佐々木慈瞳(じとう)さん(奈良県桜井市)が、「病気があってもなくても、欲ばりで粋に過ごしながら、自分らしく善く生きよう」という考えを伝えるため、キャラクター「よくいきちゃん」を考案し、カードにして患者らに配っている。講演会などで一般の人にも広めており、「おふだのように手元に置いて、『よくいき』を実践してほしい」と話す。

「よくいきちゃん」の誕生とデザイン

佐々木さんは週2回、西奈良中央病院(奈良市)の緩和ケア病棟を訪れる。デイルームで折り紙のバラやカーネーションを折っていると、患者や家族が話しかけてくる。そんな人たちに、カードを手渡す。

最後に自宅で過ごしたい、釣りがしたい、旅行に行きたい、孫の顔が見たい――など。人生を「欲ばりに粋に」過ごし、「善く生き」る。そのために自らを見つめ、周囲も「あなたが願うなら一緒に協力しよう」と支え合う。そして、精いっぱいに生き抜き、「良く逝き」きった姿は、残された人の心に深く刻まれる。そんな「よくいき」の考えをキャラクターにした「よくいきちゃん」は、にこやかな表情で、頭から芽が出ている。ヒゲはよくみると「生き」という文字になっている。

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カード制作と配布の広がり

佐々木さんは、県総合医療センター(同)の緩和ケアチームの公認心理師も務めており、「よくいきちゃん」は2023年秋、同センターで生まれた。患者らに「よくいき」について説いている中で、緩和ケア内科の伊佐敷沙恵子医師と「キャラクターをつくろう」という話になり、伊佐敷医師の夫で、総合内科医の頌太医師がデザインを考案。患者や遺族を集めた「よくいきカフェ」の場で披露した。

その後、佐々木さんの友人の「まっちゃん」が引き継いでデザイン画を描き、佐々木さんが自らラミネート加工してカードを制作。バイオリンを弾いたり、サッカーをしたり、野菜や新聞を手にしたりした様々な「よくいきちゃん」が生まれている。これまでに作ったカードは、約1万枚に上る。病院で患者らは病室に飾るなどし、転院した際にその病院から「よくいきちゃんの患者さんが来たよ」と、佐々木さんに連絡が来ることもある。講演会などでも参加者に一枚一枚手渡し、「元気なうちから、自分の思いを家族や友人に話して互いにわかり合うように」と勧める。

緩和ケアの新たな役割と実践

伊佐敷医師は「患者にまだ自分にはやりたいことも、できることもあると思ってもらいたい。緩和ケアのイメージを変えることに、よくいきちゃんは役立っている」と話す。

母親をみとったある女性は、車椅子を押して大阪・関西万博を訪れたり、舞台鑑賞に出かけたりするなど、亡くなるまで行動をともにした。「母が大切にしていたものを一緒に体験し、母の人生を受け継ぐ時間になりました」と、佐々木さんに話した。

「仕事や趣味、ふるまいなど、こうでありたいと追いかけてきた中で人は病気になる。目指すゴールをどこにするのか、何をすればいいのか。自分と周りとが同じ目標に向かってがんばることは、互いに善く生きるということ。それが欲ばりで粋な生き方をつないでいく」。佐々木さんは今日も優しくほほ笑みかける。

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佐々木慈瞳さんは、中央大卒業後、早稲田大大学院人間科学研究科修了。中央大の事務局で10年間勤務した後、高野山真言宗と融通念仏宗で得度。NHKの番組「やまと尼寺精進日記」の音羽山観音寺で、副住職(当時)として出演した。現在は、明日香村国民健康保険診療所で毎週「よくいきばなし」をするほか、県教育委員会のスクールカウンセラーとして、小中学校を巡回している。