東京都民泊旅館事業者協会理事の戸谷豪志さん(33)が、民泊のネガティブイメージを打ち破り、災害時の避難施設としての活用など新たな可能性を切り開こうと活動を続けている。訪日客の受け皿として人気を集める一方、ルールを守らない利用者による騒音やゴミ出しなどのトラブルが地域社会との摩擦を生んでいる現状がある。
地域との共生を重視
戸谷さんは「自分が生活する街に、見知らぬ人が出入りすることが不安、という声をいただく」と民泊の課題を率直に受け止める。不安を払拭するため、都内の民泊事業者を支援する同協会は「地域との共生」を活動の根幹に据えている。
「運営側の顔がわからないことが不安につながる」と話す戸谷さんは、「地域の一員」として街に溶け込むことを徹底。毎月の地域清掃活動や夜警への参加に加え、トラブル発生時の仲立ちも行い、顔の見える関係を築くことで住民からの信頼獲得を目指す。
さらに、各事業者に対しては適正運営教育を厳格化し、今年6月には東京都へ民泊規制の適正化を求める緊急要望書を提出した。悪質な無許可営業の取り締まり強化や、地域の実情に応じた柔軟な規制ルールの制定など、抜本的な制度改正を求めている。
災害時の避難施設として活用
戸谷さんの視線は観光の枠を超え、有事の社会貢献にも向けられている。民泊を災害時に地域社会を支える「災害インフラ」へと転換させる試みだ。「『衣食住』という言葉が示すように、住む場所がないことは人間にとって致命的です」と話す。
災害大国である日本では、避難所のあり方が喫緊の課題だ。体育館などの公的な避難所は、集団生活によるプライバシーの欠如や衛生面の負担が大きい。特に高齢者や乳幼児を抱える世帯にとって、慣れない環境での共同生活がもたらす心身のストレスは計り知れない。戸谷さんは既存の避難体制の死角を埋める一手として「民泊が活用できる」と提言する。
戸谷さんは現在、新宿区や豊島区を中心に約200物件を、災害被災者や帰宅困難者向けの避難施設として無償提供する体制を構築。実際に令和6年の能登半島地震発生時には、被災者の避難先として無償で施設を貸し出し、「余震が続く中、少しでも不安を和らげることができて助かった」との声が利用者から寄せられたという。
空き家対策への貢献
今後の目標は「地域社会への貢献を通じ、民泊の可能性を広げること」だとし、遊休資産を効果的に活用することで「空き家対策や地域活性化の解決につなげたい」と意欲を見せる。一部のトラブルが世間の耳目を集める現状については「負のイメージが先行してしまうのは非常に悲しい」と吐露する。
それでも「民泊を応援してもらえる存在になれるよう貢献すれば、少しずつ見方も変わると信じている」と先を見据える。平時も有事も安心を提供できるよう、戸谷さんの活動は続く。