惣十郎浮世始末 第250回 図面盗用疑惑で再審理 お粂の反応に緊張走る
惣十郎浮世始末 図面盗用疑惑で再審理 お粂の反応

図面盗用の嫌疑で再審理決定 お粂との緊迫した対面

崎岡から肘で小突かれた惣十郎は、余計なことをするなという彼の視線を無視し、下男に「いいから、上げてやっつくんな」と砕けた調子で頼んだ。女はのろのろと足を上げ、時間をかけて穿鑿所に上がり込み、妖怪さながらに禍々しい様子で這い進んできた。きつい体臭に息を詰める惣十郎の隣では、崎岡も袂で鼻を覆っていた。

弓浜の訴えを伝える惣十郎

「お前に図面を盗用されたという者が出て参ってな、その廉で、お前を再び詮議することと決まったのだ」と、惣十郎はお粂に告げた。牢屋同心の前で、弓浜が奉行所に起こした訴えをそのまま伝えるのである。盗用を認めても、武器密造と謀反の罪に比べれば微罪であり、刑が重くなることはないはずだった。

しかし、お粂は板間に目を落としたきり、こちらを見ようともしない。その態度に、場の空気がさらに張り詰める。

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「リュクトポムプ」の盗用疑惑

「訴人曰く、己の考案したリュクトポムプをお前がそのまま盗用し、源次郎なる鍛冶に造らせていたということだが、まことか」と、惣十郎が問いかけると、刹那、お粂が素早く顔を上げた。その目は射るように鋭く、惣十郎を見据える。

「弓浜か」と、低くも芯のある強い声が初めて聞かれた。真っ先に弓浜の名が出たことから、お粂が彼ら親族とリュクトポムプ造りに勤しんでいたことは間違いないだろう。通常、訴人の詳細は伏せられるが、今回は盗用の嫌疑であるため、惣十郎は隠し立てせずに頷いた。

父親の名を巡る問答

「弓浜宗佑なる彦根藩士だ」と伝えると、お粂は訝しげに返した。「清佑の間違いではないか。宗佑の父やが」と。これに対し、惣十郎は「父親は昨年逝ったと聞いておる」と答える。

お粂は、瞬きもせずに惣十郎を見詰め、その言葉の真偽を見透かそうとするかのようだった。取って食われそうな迫力に、惣十郎は思わず身を硬くする。やがて、お粂は深い息を吐き、「死んだか」と、痰でも吐くような調子で言った。そのまま穿鑿所の床に吸い込まれてしまうのではないかと危ぶむほどに、彼女はぐったりとうなだれたのである。

この場面は、図面盗用の嫌疑をめぐる審理が、単なる手続きを超えた緊迫した心理戦へと発展する様子を鮮明に描き出している。お粂の反応からは、弓浜家との複雑な関係や、事件の背後に潜む真実の一端が窺える。惣十郎の冷静な対応と、お粂の激しい感情の起伏が交錯し、物語に深みを与えている。

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