木内昇『惣十郎浮世始末』第252回 お粂の鋭い反撃と鉄砲部品の謎
惣十郎浮世始末252回 お粂の反撃と鉄砲部品の謎 (16.03.2026)

木内昇『惣十郎浮世始末』第252回 お粂の鋭い反撃と鉄砲部品の謎

2026年3月17日公開の木内昇による時代小説『惣十郎浮世始末』巻之二第252回では、主人公の惣十郎と老婆お粂の緊迫した対峙が描かれている。前回からの続きで、お粂のこめかみの傷を気遣う惣十郎の行動が、意外な反発を招く展開となった。

温情を拒絶するお粂の鋭い反撃

泡を食っている崎岡をうっちゃって、惣十郎はお粂のこめかみから手拭いをそっと外した。かすり傷だったらしく、血はもう止まっている状況であった。惣十郎は「瘤になっちゃあいけねぇから、少し冷やそう。こいつを水に潜らせてきてくれめぇか」と、庭で控えていた牢屋下男に手拭いを掲げて見せた。

その瞬間、お粂の左手が伸びて、目にも留まらぬ速さで惣十郎の手を弾いた。手拭いが勢いよく飛んで、力なく床に落ちるという意外な事態が発生。思いもかけないことに、惣十郎は瞠った目をお粂に据えた。

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お粂は「気安く触るんじゃないよっ。こんな傷はね、あたしにゃ茶飯事なんだ。不浄役人がなにを聞き出そうとしてンのか知らないが、温情をかければ言いなりになると思ったら大間違いだよっ」と鋭く反論。見た目にはやつれて生気を失った老婆だが、動きも機敏なら、頭もはっきりしている様子が浮き彫りになった。

衰えぬ気迫と鉄砲部品の謎

お粂は、捕まったときからひとつも衰えていないのではないか――惣十郎の背筋がおのずと伸びる。懲りずにお粂を羽交い締めにした牢屋同心を目で制してから、惣十郎は「すまねぇ、余計なことぉしたな。まぁ落ち着いてくんな。もちっと訊きてぇことがあるからよ」と語りかける。

惣十郎は崎岡に向け、顎をしゃくった。奴は、俺に命ずるな、と言わんばかりに下唇を突き出したが、お調べのさなかであるから抗弁はせず、携えてきた行李から鉄の棒や筒、台座を取り出した。

目の前に並んだ品を見て、お粂は懐かしげに目を細めるも、「お前が造ってたもんに間違いはねぇな」と認める。しかし、訊くと途端に、仏頂面でそっぽを向いた態度を見せた。

五年前の事件を巡る攻防

惣十郎は「五年前のお調べじゃあ、これが鉄砲の部品だってぇことになってるが、確かかえ」と問い詰める。これに対しお粂は「吟味の挙げ句にそう決まったんだから、そうなんでしょうよ」と冷淡に返答。

「おい、ここでしかと申し開きをしとくがいいぜ。俺たちゃ、まことのところを明らかにするために、こうして来てンだからよ」と惣十郎が迫ると、お粂は「申し開き……へえ、ずいぶん偉そうにお言いじゃないか。そもそもあたしは一度たりとも、武器を造ったと認めたことなぞないんだ。認めてもないのに、今更なんの申し開きをしろってンだよ」と反論。

さらに「むしろさ、この鉄の棒だの台座だのが、鉄砲のどんな箇所に使われるのか、あたしに教えてくださいよ」と逆質問を投げかけ、役人側の証拠解釈に疑問を呈する姿勢を見せた。このやり取りから、五年前の鉄砲製造疑惑事件の真相解明に向けて、新たな展開が予感される状況となっている。

本編では、お粂という老婆のしたたかさと、惣十郎をはじめとする役人側の捜査姿勢が鮮明に対比されている。捕縛後も衰えを見せないお粂の気迫が、事件の核心に迫る重要な鍵となりそうだ。

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