スモーキングルーム第171回:変装と隠し部屋で進む秘密の救出作戦
金ボタンは反射的に目を逸らしてしまった。総支配人が手に入れてくれた郵便配達人の制服を着替えとして広げると、「心配ない」と声をかける。老夫婦は安堵の表情を浮かべ、金ボタンは相槌を打ちながら、なぜ自分が軽口を叩けなかったのかと不思議に思った。若い女性はわずか数分で荷物を詰め、数冊の本と日記らしき手帳、家族の写真、そして着替えだけを旅行用鞄に収めた。
ホテルに潜む秘密の空間
老夫婦と抱き合い、感謝の言葉を呟いた女性は、総支配人と共に部屋を出ていった。金ボタンは車が去るのを見届けると、帽子のつばに手をやり、「さて、お届けものはありませんか?」と片頰で笑った。森のホテルの客層は大きく変化していた。合法的にJの財産を奪った実業家たちや、密告して党の高官になった役人たちが、殺伐とした街を逃れて休暇に訪れていた。
従業員たちは「成りあがり」と悪口を囁きながらも、丁重に接客を続けていた。総支配人と金ボタンは変装をしながら、鳥の巣のリストに記載された人々を捜索し、ホテルに招き入れていた。ある者は夜更けに裏口から、ある者は正面玄関から偽名を使って部屋へと通された。
無数に広がる隠し部屋のネットワーク
ホテルには無数の隠し部屋が存在していた。具体的には以下のような場所に設置されていた。
- 地下に広がる秘密の空間
- 客室と客室の間に設けられた隠れ部屋
- 客室の衣服棚の奥に隠された通路
- スモーキングルームの書棚の裏にある隠し部屋
さらに、格式の高い部屋が並ぶ階と地上階の間にも、秘密の空間が巧妙に隠されていた。これらの隠し部屋や通路には電気が通っておらず、暗闇の中で活動が行われていた。
煙からの指示とランプの受け渡し
煙は自室で年代物の燭台に蠟燭を挿しながら、金ボタンに話しかけた。「少し天井は低いけどね」と前置きし、隠し部屋の状況を説明した。そして、携行用のランプを金ボタンに渡しながら、「読書が好きみたいだ。持っていってあげるといい。きっと礼拝堂にいる」と伝えた。
さらに煙は、「お前も来いよ」と促し、昨夜の会話を思い出させた。貸した本は急がなくていいと伝えてくれれば十分だというメッセージを添えた。金ボタンはランプを受け取り、次の行動に向かう準備を整えた。秘密の救出作戦は、変装と隠し部屋を駆使して、静かにそして確実に進められていた。



