教師に「音痴なら歌うな」と言われた30歳女性を救った1200年続く詩吟の世界
教師に「音痴なら歌うな」と言われた女性を救った詩吟

教師から「音痴なら歌うな」と言われた30歳の女性が、1200年の歴史を持つ伝統芸能・詩吟との出会いによって再び声を出す喜びを取り戻した。その背景には、詩吟の持つ独特の発声法と、年齢を問わず誰でも取り組める奥深さがある。

詩吟の歴史と現代への継承

詩吟の起源は平安時代初期、806年まで遡るとされる(諸説あり)。遣唐使として中国に渡った空海が持ち帰った漢詩を基に、平安貴族や幕末の志士たちに愛され、やがて学校教育を通じて一般大衆へと広がった。1200年の時を経て、詩吟は日本の伝統文化として脈々と受け継がれている。

しかし、数十年前までは誰もが口ずさめる「みんなの教養」だった詩吟も、現代ではその存在が薄れつつある。そんな中、旦早流吟詠会の宗嗣兼理事長を務める島田旦桜さんは、詩吟の魅力を広めるべく活動を続けている。

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発声練習の奥深さ

詩吟のレッスンは発声練習から始まる。単に声を出すだけでなく、以下のような多様な練習が行われる。

  • 「あえいう」の繰り返し:喉を開く準備運動。
  • 長音:一音を長く伸ばし、息のコントロールを鍛える。
  • 音階練習:半音上下など音程を変えて発声。
  • こぶし:意図的に声を揺らす技術。
  • ゆすり:語尾を美しく止める発声。
  • 鼻濁音:鼻に抜けるような音を出す。

「鼻濁音は難しいんですよ」と島田さんは語る。特に「ゆすり」は、語尾をピタッと止めることで音を響かせる効果があり、詩吟の美しさを引き立てる重要な要素だ。

詩吟がもたらす心理的効果

30歳の女性は、幼い頃に教師から「音痴だから歌うな」と言われ、長年声を出すことにコンプレックスを抱えていた。しかし、詩吟では「音痴」という概念が異なる。詩吟はカラオケのような正確な音程よりも、声の響きや表現力が重視される。女性は詩吟を通じて、自分の声に自信を取り戻し、生きる喜びを再発見したという。

現在、詩吟愛好家の多くは60~80代の高齢者だが、若い世代にもその魅力が広がりつつある。島田さんは「詩吟は年齢や経験を問わず、誰でも始められる。声を出すことで心身の健康にも良い影響を与える」と話す。

1200年の伝統がもたらす癒し

詩吟は単なる伝統芸能ではなく、現代人のストレス社会において心の癒しを提供する手段としても注目されている。発声練習による呼吸法は、自律神経を整え、リラックス効果をもたらす。また、漢詩の持つ文学的要素が、精神的な豊かさを与える。

「詩吟は全身を楽器にする芸術です」と島田さんは強調する。鼻濁音やこぶしといった技法は、一見難しく感じられるが、基本を繰り返すことで誰でも習得可能だ。そして、その過程で得られる達成感が、高齢者の生きがいづくりにもつながっている。

詩吟の未来は、伝統を守りつつも新しい風を取り入れることで、さらに広がりを見せている。旦早流吟詠会では、初心者向けのワークショップやオンラインレッスンも開催し、幅広い世代に門戸を開いている。

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