経営トップの判断や思考をAIで再現する取り組みが、国内の大企業に広がっている。三井住友フィナンシャルグループはグループCEOを模した「AI-CEO」を2025年8月に導入。キリンホールディングスは12のAI人材を持つ「AI役員 CoreMate」を経営戦略会議に取り入れ、26年4月にはグループ会社にも展開した。
NTTドコモビジネスもその一社だ。6月10~12日開催の「Interop Tokyo 2026」(幕張メッセ)では、同社の西垣要氏(エバンジェリスト)が、NTTドコモビジネス小島重信社長を再現したAI「AIコジー」について講演した。
「本当に要るの?」から始まった社長AI
当初は社長AIの存在そのものに懐疑的だったが、今は見方が変わったと西垣氏。同社部署も9割が「方向理解に役立った」と評価するという。果たして、西垣氏が認識を改めたAIコジーとはどんなAIなのか。
AIコジーは小島社長の発案から生まれた。小島社長から「社長AIみたいなの欲しいんだけど」と持ちかけられた西垣氏は、当初「本当に要るの?」と即答してしまったという。
話を聞くと、社長は会議で繰り返し同じメッセージを伝えているのに浸透しないという課題を抱えていた。社長ならではの判断の観点が、組織の階層を経るうちにそぎ落とされてしまう。一方で、社長AIがあれば社員がいつでも判断の根拠を確認できる。
小島社長がAIを求めた背景には「判断の伝達不足」があった。
AIコジーの仕組みと効果
そうした需要のもと生まれたのがAIコジーだ。社長に相談するように質問すると、過去の部署会議での発言を踏まえた回答が返ってくるチャット型AIで、例えば「NTTドコモビジネスはInteropにどう取り組むべきか」と聞くと、過去の出展実績やソリューションの内容まで含めた回答を生成する。
部署約70人に3カ月間使ってもらった結果、「先週の会議の内容に追いつけない」「社外の話題への回答の解像度を上げてほしい」といった課題や要望がある一方、9割が「社長の考えや方向をより深く理解するのに役立った」と回答。業務の補佐やアイデア整理に活用され、「正確性が高い」「社長らしいコメントだった」という声もあったという。
西垣氏は「社長の考えを再現するAIは、組織の判断の一貫性を保つ上で有効だ」と強調する。
関連するAI活用の動き
社長AIの開発は、企業におけるAI活用の一環として注目されている。例えば、GMOインターネットグループは「AI嫌韓正燮」を開発し、社内での提案を開始。また、東京都は「AI都知事ユリコ」を公開し、AIアバターが都政の情報発信を行っている。ヤマダホールディングスはロボット接客を導入し、接客AIサービスの開発を目指す。
AIによる経営判断の支援は、今後さらに普及が進むと予想される。NTTドコモビジネスは、AIコジーの改良を続け、より精度の高い判断支援を目指す方針だ。



