英国で長年にわたり高速列車として親しまれてきたHST(High Speed Train)が、日立製作所製の新型車両への置き換えにより、その役割を終えようとしている。最高時速200kmを誇るディーゼル超特急「インターシティ125」は、半世紀以上にわたって英国の主要都市間を結び、鉄道復活の立役者となった。
英国国鉄の救世主となったHST
1970年代、旧態依然とした英国国鉄(British Rail)は、マイカーの普及により利用者数が低迷していた。そんな中、HSTによる「インターシティ125」サービスの開始は、同社に息を吹き返すことになる。HSTはまさに、赤字に瀕していた英国国鉄の救世主だった。ヨーロッパでは都市間を結ぶ特急列車に「インターシティ」の名称が使われているが、その発祥は1950年代の英国であり、インターシティ125の活躍によって世界的に広まった。
一方、当初高速列車の本命とされたAPT(Advanced Passenger Train)は、営業運転を開始したものの量産型の開発は断念され、1986年には運行から撤退。プロジェクトは終了となった。
民営化後も活躍、多様なカラーリングで
1990年代半ばに英国国鉄が民営化され、全国に多数の運行会社が登場すると、HSTは各社で幅広く使用され、全土でさまざまなカラーリングでの活躍が見られた。例えば、ダウリッシュの海岸沿いを走るクロスカントリー鉄道のHSTや、ロンドン・キングスクロス駅を発車する「ヴァージン・トレインズ」塗装のHSTなど、各地で異なる姿を見せていた。
日立製新型車両の登場で引退加速
しかし、30年近くの活躍を経て21世紀に入ると、HSTにも世代交代の波が押し寄せる。引導を渡すことになったのは、日立製作所製の高速列車だ。2005年、英国運輸省は大規模な車両置き換え計画「インターシティ・エクスプレス・プログラム(IEP)」を立ち上げ、HSTなどの代替車両の入札を開始。2012年、日立製作所や英国の投資会社などが設立した合弁企業アジリティ・トレインズが正式に受注し、新型車両の製造が始まった。
日立製の高速車両800系(クラス800)シリーズには、いくつもの派生タイプ(800~803系、805系など)が存在するが、ベースとなる800系の特徴は、電車ながらエンジンも搭載し、電化区間と非電化区間を直通できる「バイモード車両」であることだ。電化区間でもディーゼルエンジンで走らなければならなかったHSTに比べて、大幅な燃料削減と環境負荷低減が実現された。
スコットランドのアバディーンでは、後継の日立製車両800系と並んだHSTの姿が見られ、世代交代が着実に進んでいる。
2028年までに全面引退へ
HSTは2028年までに全面引退する予定であり、その長い歴史に幕を下ろす。半世紀以上にわたり英国の鉄道を支えたディーゼル超特急の軌跡は、鉄道ファンのみならず多くの人々の記憶に残ることだろう。



