米連邦最高裁は6月29日(現地時間)、警察が「ジオフェンス令状」によってGoogleからユーザーのスマートフォンの位置情報を取得する行為は、合衆国憲法修正第4条が保護する「捜索」に当たるとの判断を示した。短時間分のデータであっても、また第三者のIT企業を介して取得した場合でも、令状による保護が及ぶとする内容で、デジタル時代のプライバシーをめぐる歴史的判断となった。
「チャトリー対合衆国」事件の背景
判断は「チャトリー対合衆国」事件に関するもので、賛成6、反対3で下された。法廷意見はエレナ・ケーガン判事が執筆し、5人の判事が支持した。ユーザーは自身のスマホの位置情報に対して「合理的なプライバシーの期待」を持つとし、警察がその情報を取得する行為は修正第4条上の「捜索」に該当すると結論付けた。
「ジオフェンス令状」とは、警察が犯行現場周辺に仮想的な境界線(ジオフェンス)を設定し、その範囲内に特定の時間にいた端末のデータをIT企業に提出させる令状を指す。容疑者が特定できていない事件で「誰がそこにいたか」を割り出す手法として使われてきた。本件では、2019年5月に米バージニア州で起きた強盗事件の捜査で、警察がGoogleに対し、現場を中心とする半径150メートルの円内にいた端末の位置情報を要求。匿名データの段階的な絞り込みを経て、最終的にGoogleが3人の身元情報を開示し、その1人が強盗のチャトリー容疑者だった。
位置情報データの性質と過去の判例
今回問題となったのは、Googleのアプリが収集・保存する「ロケーション履歴」と呼ばれる位置データだ。約2分ごとに端末の位置を記録し、誤差は約20メートルで、建物の何階にいるかまで推定できるとされる。最高裁は、携帯電話の基地局情報(CSLI)の取得を「捜索」と認めた2018年の「カーペンター対合衆国」判決を引き合いに出し、ロケーション履歴はCSLIよりもさらに詳細に個人の行動を記録するため、同じ理屈がより強く当てはまると指摘。第三者に預けた情報には憲法上の保護が及ばないとする「第三者法理」についても、カーペンター判決と同様に本件には適用されないと退けた。
ただし最高裁は、今回の取得が「捜索」に当たると判断した一方で、本件の令状そのものが相当な理由や捜索範囲の特定性といった修正第4条の要件を満たしていたかどうかについては判断せず、連邦控訴裁に差し戻した。このため、チャトリー容疑者の有罪が直接的に覆るわけではない。
Googleの仕様変更と今後の影響
なお、Googleは2023年12月にロケーション履歴のデータを自社サーバではなくユーザーの端末上に保存する仕様変更を発表しており、判決文によると、Googleはこの変更により「ロケーション履歴を求めるジオフェンス令状にはもはや応じられない」としている。このため、本件で争われた手法自体が現在ほぼ使えなくなっている。ただ、最高裁の判断の核心は、ユーザーが「自分のもの」と考えるデータは、IT企業のサーバに預けてあっても令状なしには取得できないという点にある。法廷意見はロケーション履歴を、GmailのメールやGoogleフォトの写真、カレンダーの予定と同列に並べており、同じ理屈は位置情報以外のクラウド上の個人データにも及び得る。このため、ジオフェンスという特定の手法が使えなくなった後も、今回示された原則は今後の捜査やデジタルデータの取り扱いに広く影響する可能性がある。



