デスクに推しグッズや好きなキャラクターのグッズを置く若手社員が増えている。一見すると業務と無関係に思えるこの行為だが、心理学の研究は、これが集中力や心理的安全性の向上に寄与する可能性を示している。日本メンタルアップ支援機構の大野萌子代表理事は、自衛隊員も学ぶメンタルチューニングの観点から、その効果を解説する。
推しグッズがもたらす3つの心理学的効果
推しグッズをデスクに置くことには、以下の3つの心理学的メカニズムが働くという。
① 自己関連性効果
推しグッズは本人にとって「自己関連性の高い刺激」であり、視界に入るだけで「よし、もうひと頑張りしよう」という気持ちを引き出す。これは、自己関連情報が脳内で優先的に処理される現象に基づく。
② マイクロ・レスト
ドイツの組織心理学者サビーネ・ゾンネンタクらの研究では、数秒から数十秒の心理的小休止が集中力回復に効果的であることが示されている。推しグッズは、仕事の合間に自然とミニ休憩をもたらし、脳の疲労をリセットする役割を果たす。
③ 環境アフォーダンス理論
環境心理学者ジェームズ・ギブソンが提唱した理論で、環境が人の行動や感情に影響を与えるという考え方。無機質なデスクよりも、自分にとって意味のある物がある環境のほうが、安心感や自己効力感が高まりやすい。推しグッズやお気に入りのマグカップは、自分らしさを象徴する環境要素として心理的安全性を支える。
これらの研究を踏まえると、デスクに私物を置く行為は単なる趣味の表現ではなく、働くうえでの心理的な支えになっている可能性が高い。
世代間で異なる私物の捉え方
では、なぜ一部の社員はデスクの私物に否定的なのだろうか。背景には世代による職場観の違いがある。
2000年代前半までに社会人になった層は、「職場は公的な場」「私生活は持ち込まない」という価値観が強く、デスク周りに個人の色を出すことを控えるべきだという意識が根強い。一方、Z世代を中心とした若手は、「職場は自分の能力を発揮する場」と捉え、心理的安全性や快適さを重視する。そのため、推しグッズを置くことを「仕事の効率を上げるための工夫」と見なす傾向がある。
組織としてどこまで許容すべきか
組織としては、私物の許容範囲を明確にすることが重要だ。過度な装飾は他の社員の集中を妨げる可能性もあるが、適度な私物は従業員のウェルビーイングと生産性向上に寄与する。大野代表理事は「企業は一律禁止ではなく、ルールを設けた上で個々の工夫を認める方向が望ましい」と指摘する。自衛隊でもメンタルチューニングの一環として、隊員の私物配置が推奨されるケースがあるという。
デスクの推しグッズは、単なる趣味の域を超え、科学的に裏付けられた生産性向上ツールとして再評価されつつある。



