今年2月から一部の薬局で緊急避妊薬(アフターピル)が処方箋なしで購入できるようになった。このスイッチOTC化により、これまで医師の処方が必要だった薬が薬局で入手可能となり、予期せぬ妊娠リスクに直面する女性の負担軽減が期待される一方、新たな課題も浮き彫りになっている。
産婦人科医が語る「安全装置」の欠如
女性クリニックWe! TOYAMA(富山市)代表の種部恭子氏は、緊急避妊薬の薬局販売に対して強い危機感を示す。「子どもが買いに来る背景にあるのは、性暴力です。それに対して安全装置が準備されているのかというと、そうではない」と述べ、特に16歳未満の少女への販売や性暴力被害者へのサポート体制が不十分であることを懸念する。
予期せぬ妊娠リスクの実態
第一三共ヘルスケアのインターネット調査によると、18~49歳の日本在住女性のうち、1年以内に性行為を経験した人の約2割が予期しない妊娠のリスクを経験している。緊急避妊薬は性交後72時間以内に1錠服用することで妊娠阻止率84%とされるが、完全な避妊を保証するものではない。
これまでは医療機関の受診が必要だったため、入手までの時間的・心理的負担が大きかった。OTC化によりアクセスが向上したことは歓迎すべき面もあるが、産婦人科医の間では、若年層や性暴力被害者への対応に不安の声が上がっている。
10代の妊娠と人工中絶の現実
日本では10代の妊娠の約72%が人工中絶に至っているというデータがある。緊急避妊薬の入手が容易になることで、望まない妊娠を減らす効果が期待される一方、性暴力の背景が見えにくくなるリスクも指摘される。
薬局販売には薬剤師による服薬指導が必要だが、16歳未満の少女が購入する場合、その背景に性暴力が存在する可能性をどのように察知し、適切な支援につなげるかが課題となる。種部氏は「薬局が困難事例に対応できるのか」と疑問を投げかける。
今後の課題と必要な対策
緊急避妊薬のOTC化は、女性の健康と自己決定権を尊重する一歩である。しかし、その一方で、性暴力被害者が孤立し、必要な医療や心理的サポートを受けられなくなる危険性もはらんでいる。産婦人科医や関係機関は、薬局と連携した支援体制の構築を急務としている。
具体的には、販売時の年齢確認やカウンセリングの徹底、性暴力被害者向けの相談窓口の周知などが求められる。種部氏は「緊急避妊薬のOTC化より大事なことがある」と強調し、性暴力そのものへの対策の重要性を訴えている。



